研究課題/領域番号 |
23H03472
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
趙 漠居 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (30825378)
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研究分担者 |
西尾 卓純 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (20966402)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 浮遊型アームロボット / 空間非局在化 / 拡張的操作行動 |
研究実績の概要 |
本研究は環境固着可能な汎用型エンドエフェクタを有する浮遊型アームロボットの3次元空間での非局在的かつ安定な操作能力の獲得を中心に進めている.2023年度では,(1)環境固着可能な汎用型エンドエフェクタ及び浮遊型アームロボットの身体構成法の構築、 (2)環境固着状態での動作制御法の設計、(3)浮遊型ロボットと地上ロボット間の連携方式の模索 の3つの側面に取り組んだ. まず,環境固着可能な汎用型エンドエフェクタに関しては、ワイヤ駆動型の多指構造を主軸に指の自由度数やサイズを検討し,最終的には1指あたり2関節を持つ3指モデルのプロトタイプを実装した.さらに,浮遊型アームロボットの身体構造に関しては,移動能力と手先操作能力の両方の向上を目指すべく,従来の2自由度推力偏向機構をベースにもう1自由度の偏向軸を導入した設計法を提案した.この新しい推力偏向機構を各リンクに搭載した2リンクタイプの浮遊型アームロボットのプロトタイプを実装し,偏向角と推力の同時制御により空中での安定な関節運動を実現した. 次に,環境固着状態での動作制御法に関しては,天井へ固着するという特定な条件下おいて,安定な固着を制約条件としたアーム姿勢の探索を最適化問題に帰着し,固着、関節運動、手先動作の3要素を含む拡張的な力学モデルの定量的な記述方法と,これらの安定性を同時に保証しかつ推力を最小化する最適制御手法の設計に取り組んだ.上記の2リンクタイプの浮遊型アームロボットを用いて,天井固着状態下でのドリル作業や塗装作業、バブル操作など多岐にわたる手先行動を実現した. 最後に,浮遊型ロボットと地上ロボット間の連携方式については,マルチロータ型飛行ロボットと車輪型地上ロボット間の離着艦動作を実証し,グラウンドエフェクトの影響を確認したうえで,安定な着艦を実現し,浮遊型アームロボットと地上ロボットの連携のための知見を深めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り, (1) 環境固着可能な汎用型エンドエフェクタを核とした浮遊型アームロボットの身体構成法、(2) 安定な手先動作を保証する固着対象のダイナミクスも含んだ拡張系の動作制御手法、(3) 3次元空間でのロボット間連携まで拡張した汎化環境・物体操作行動の獲得方法、のすべての側面について段階的に理論構築と実証実験を実施した.
まず,浮遊型アームロボットの身体構成法については,汎用型エンドエフェクタの操作能力と環境固着能力の両方を保証した軽量な多指構造の実装に成功したが,アームロボットへの搭載と固着行動の実機検証には至っていない.つぎに,拡張系の動作制御手法に関しては,安定な固着を制約条件とした姿勢と手先制御法を模索し,推力の最適化を評価項とする制御数理モデルの確立とシミレーション・実環境の両面からの安定性検証を実施し,提案の制御手法の有効性を実現した.さらに, 3次元空間でのロボット間連携については,マルチロータ型飛行ロボットと車輪型地上ロボット間の自律離着艦動作を実証し,提案する浮遊型アームロボットと地上ロボット間の連携の土台を築いた.以上の成果より,初年度の目標である基盤づくりは概ね実現できたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は(1) 環境固着可能な汎用型エンドエフェクタを核とした浮遊型アームロボットの身体構成法、(2) 安定な手先動作を保証する固着対象のダイナミクスも含んだ拡張系の動作制御手法、(3) 3次元空間でのロボット間連携まで拡張した汎化環境・物体操作行動の獲得方法、について以下のように研究をさらに深めていく. まず,浮遊型アームロボットの身体構成法については,軽量なワイヤ駆動型多指エンドエフェクタの設計を進めていき,マルチロータ型飛行ロボットと浮遊型アームロボットにそれぞれ搭載して,環境操作能力と環境固着能力の両方の性能を実機ベースで評価していく.つぎに,拡張系の動作制御手法に関しては,安定な固着を制約条件とした姿勢制御に加えて,手先動作も同時に考慮する制御手法を構築する.また,最適な推力以外にもアームの関節トルクも制御出力として扱う制御器の数理モデルを展開し,シミレーション・実環境の両面から浮遊行動の安定性を実証していく.さらに,汎化環境・物体操作行動の獲得方法については,対象の浮遊型アームロボットと四足タイプの地上ロボット間の連携行動における両者の計画法に取り組み,地上ロボットとの離結合を主軸とした拡張的な環境操作の実現を目指す.
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