研究課題/領域番号 |
23KK0015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
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研究分担者 |
樋口 浩和 京都大学, 農学研究科, 教授 (50303871)
林 武司 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60431805)
飯泉 佳子 日本大学, 文理学部, 准教授 (00414996)
友尻 大幹 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (60887412)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2029-03-31
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キーワード | フードシステム / 農業生態 / 地形・水文環境 / 食文化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世界的な農林水産業再編の潮流が縮図のように現れるベトナム南部メコンデルタにおいて、小農の生産様式が自然環境や流通システムとの相互作用によってどのように形成・再編されているかを明らかにし、ローカルかつグローバルな食料安全保障のあり方を考察することである。 研究代表者らは、本課題の採択通知を受けた直後の2023年9月末に、別経費でベトナム・メコンデルタを訪問し、カントー大学の共同研究者らと今後の方針を協議するとともに、Hau Giang省、Dong Thap省、Soc Trang省において、小農の生産様式に与える自然環境と流通システムの影響について現地調査を行った。翌10月にプロジェクトを開始してから、研究分担者を中心に、JAXAが無料公開するデジタルデータを用いて、メコンデルタの過去30年の土地利用・土地被覆の変化を分析し、デジタル標高モデルAW3Dの購入区域の検討を行った。また研究分担者らは、2023年9月に別経費でメコンデルタに渡航し、水稲栽培における温室効果ガス排出削減や、魚類の生態と利用に関する現地調査を行った。また研究代表者は2024年1月に、比較調査地であるラオスから、ラオス国立大学森林科学部の共同研究者を京都大学に招へいし、今後の共同研究と学術交流について協議した。さらに「東南アジアの自然と農業研究会」と共催のかたちで、メコンデルタのエビ養殖と環境認証制度に関する研究会を開催し、多様なバックグラウンドをもつ約20人の参加者と討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、本課題の採択通知を受けた直後に、重点調査地であるベトナム・メコンデルタにおいて、カントー大学理学部の共同研究者らと今後の方針を協議するとともに、現地調査を実施した。また比較調査地であるラオスのラオス国立大学森林科学部から共同研究者を京都大学に招へいし、今後の方針を協議した。さらにJAXAが無料公開する高解像度土地利用土地被覆図を用いてメコンデルタにおける調査地周辺を分析し、デジタル標高モデルAW3Dの購入区域を検討した。研究分担者らはメコンデルタの水田稲作や、魚類の生態と利用に関する現地調査を行った。またメコンデルタのエビ養殖と環境認証制度に関する研究会を開催し、小農によるエビ生産の動態や、グローバルな環境制度の地域での運用実態と、自然環境や流通システムとの関係について討論を行った。このような活動内容から、進捗状況はおおむね順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者と研究分担者は、カントー大学の共同研究者と協力して、メコンデルタにおける定点調査地を複数定め、農業生態、地形・水文環境、流通システム、食文化に関する現地調査を行う。またこれまでに現地調査で得られた質的情報と、JAXAが無料公開する高解像度土地利用土地被覆図や、デジタル標高モデルAW3Dとを照合して、急速に変容する小農の生産様式とその背景を分析する。2024年8月には、カントー大学の共同研究者を日本に招聘し、国際ワークショップを開催するとともに、今後の共同研究の進め方について協議する。さらに比較調査地であるラオスにおいて、ラオス国立大学森林科学部の共同研究者とともに、小農の生産様式に与える自然環境と流通システムの影響に関する現地調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度にはデジタル標高モデルAW3Dの購入を予定していたが、業者に見積もりを依頼すると、ベトナム・メコンデルタの調査対象地では予想以上にデータ欠損値が多かった。AW3Dの価格は、高精細版では最低購入価格が約60万円と高額であり、拙速にデータを購入することは得策でないと判断された。そのためAW3D購入経費を次年度に繰り越し、もう一度現地調査を行って購入対象範囲を確認することで、経費の効果的な執行をはかることとした。 また円安と燃料費高騰の相乗効果で、海外渡航費や、現地での食費、滞在費、車借り上げ費が、以前よりはるかに高額になっている。そのような状況を鑑みると、単年度予算の分担金だけでは、航空券購入費の占める割合が高く、現地調査に割くことのできる経費が少なくなる。そのため次年度に繰り越して次年度経費とあわせることで、現地調査を充実させることにした。 なお本課題は2023年9月に採択が決まり、同10月下旬から経費の執行が可能となったため、2023年度経費の執行期間が短かったことも理由の一つである。2024年度には、2023年度に実施することのできなかった、デジタル標高モデルAW3Dの購入と、現地調査を遂行したい。
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