研究課題/領域番号 |
23KK0052
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小濱 芳允 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90447524)
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研究分担者 |
木俣 基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20462517)
杉浦 栞理 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20869052)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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キーワード | 熱伝導 / 熱電効果 / 技術開発 / パルス磁場 / 定常強磁場 |
研究実績の概要 |
2023年度は半年間にわたって、代表の小濱、分担の木俣および杉浦、海外の共同研究者であるChristophe Marcenat博士の間で研究交流が進んだ。まず小濱の指導している博士課程の学生(松山)が2023年10月から約4か月間、グルノーブルにあるChristophe博士の研究室に滞在した。小濱自身も2024年2月に1か月間、Christophe博士の研究室に滞在した。そしてChristophe Marcenat博士も2024年3月頭から2024年4月末の2か月間小濱の研究室に滞在した。Christophe博士の滞在期間において、Christophe博士は東北大青木研究室に5日間、さらに東北大金属材料研究所に9日間滞在した。後者の滞在では分担の木俣の保有する回転プローブを使い、低温・強磁場での熱物性測定を進めた。以上のような交流を通じて、低温・強磁場の熱測定結果が揃いつつあり、例えば2023年度はグルノーブルで測定された低温比熱の結果をNature Communication誌(Editor's Highlight)に出版した。相互に密接な研究交流が進んだといえ、松山・小濱のグルノーブル滞在においても、当初は予想できなかった研究者とのネットワーク構築が進んだ。これは新しい共同研究の芽生えとなっていえる。 2023年度における装置開発についての進展として、小濱と松山はChristophe博士が開発した高精度比熱測定プログラム・比熱測定セルの製作方法を学んだ。またChristophe博士も小濱の作った新型比熱測定セルの構造を学び、今後これらの測定セルによる研究を進めることで合意した。同様に木俣の持つ回転プローブについての議論も進み、2024年度における研究交流の日程及び進め方についてChristophe Marcenat博士と合意が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、『1.強磁場・低温で稼働する様々な熱測定技術を開発』し、これを『2.物理コミュニティで注目されている物質系に応用』することである。 1番目の目的については、熱測定技術開発の土台を作るべくグルノーブルにあるChristophe博士の研究室と技術交流を行った。これにより測定プログラムおよびエレクトロニクス環境が整備され、研究代表者の研究基盤がある物性研で、グルノーブルと同等の高精度比熱測定が行える研究環境を構築できた。これはソフトウェアが整備されたことを意味する。さらには定常強磁場で有用となる、8端子を有し外径が10Φの小型のインジウムシール型断熱セルを製作した。これはソフトウェア技術の交流のみならず、測定セル等のハードウェア技術が発展し、この技術を共有したことを意味する。そういう意味で、共同で熱測定技術を開発するという研究目的はおおむね達成していると判断した。 2番目の目的である物理コミュニティで注目されている系における研究についての進展も順調である。開発中の新しい測定技術を応用するのは不可能であるものの、既にChristophe博士の研究室で実現している99.99%という非常に高精度の比熱測定セットアップを用いて、グラファイトの比熱研究を完了させた。更には幾つか他の物質群において同様の高精度比熱測定を基盤と下共同研究を進めることができており、この研究の進展は研究初年度としては、順調と判断できる。 以上のように、装置開発および物性研究いずれの視点からも、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はChristophe博士との研究交流をさらに増やしていく。小濱および小濱の指導する博士課程の学生である松山はそれぞれ独立に1ヶ月グルノーブルに滞在する予定である。Christophe博士も2024年度4月は日本に滞在しており、2024年度の研究交流は順調に進んでいる。また分担の木俣も2024年度中にグルノーブルへの滞在を予定しており、グループ内の相互のコミュニケーションは十分であると考えられる。 2024年度の研究計画の詳細であるが、小濱は当初の予定どおり、交流法による熱拡散率および熱伝導率測定技術の確立を目指す。これらの交流測定手法の確立は、次年度以降の熱電効果の測定にも応用可能と考えられ、研究活動の裾野を拡大できる。また松山は、これまでに開発した技術を用い、スピン系を中心とした物理的成果の取得・及び発表をめざす。木俣・杉浦については回転プローブや熱測定などの装置開発を進めつつ、強磁場・低温領域での研究成果の取得を目指す。 2025年度以降は、2024年度中に開発した測定技術をベースとして、装置開発のみならず物性研究における成果を得られるように共同研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に計上していた旅費が当初の予定より節約されたため、本予算の一部が次年度に繰り越された。これは先方負担などにより旅費の支払いが不要になったためである。繰り越された金額は比較的少額であるため2024年度の執行計画に変更は無い。2024年度は計画通り、国際共同研究の活性化を進める。
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