研究課題/領域番号 |
24247044
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
海部 陽介 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (20280521)
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研究分担者 |
横山 一己 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, その他 (40126628)
長谷部 徳子 金沢大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60272944)
高井 正成 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (90252535)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人類学 / 進化 |
研究概要 |
化石脳の容量測定について、不完全なジャワ原人の頭骨化石からその頭蓋腔容量(脳容量の近似値)を正確に推定する新手法の概要を固めた。さらに次年度の実践に向け、使用する基礎データセットの拡充を進めた。 フローレス原人について、論争の的になっていたフローレス原人の頭蓋腔容量を、高精度マイクロCTデータを用いて決定した。合わせて身体サイズと脳サイズの関連について、現代人のデータを収集して調査し、その関連が従来の想定よりも強いことを発見した。これらの知見を合わせて、フローレス原人が大型のジャワ原人から矮小進化した可能性を否定できないという主旨の論文を発表し、BBCなど国際メディアから注目を集め、Nature・Science誌にも紹介された。またフローレス原人の歯について、現代人や他の原人との大規模形態比較を行い、現在論文を準備中である。 ジャワ原人について、現地研究者を招聘し、ンガウィ出土の原人頭骨のCTスキャンを、東京にて実施した。中部ジャワのサンブンマチャンにある、年代不詳のジャワ原人の頭骨化石発見地点に赴き、この化石の年代を追求するための地質調査と光励起ルミネッセンス法による年代測定用サンプリングを行った。この野外調査によって当地域の地層形成史が明らかになってきたので、測定がうまくいけば年代が決まるであろう。 台湾の古人類学的潜在性のある有望地域の動物化石について、電子線マイクロアナライザによる成分分析を行い、フッ素などの含有量を定量した。生物層序的に年代がわかる示準化石と比較することにより、この化石群の相対的年代を絞り込める見通しである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化石脳の容量測定については、手法の開発が順調に進んだ。ただし膨大な手作業が必要な解析データの準備にはまだ時間を要する。フローレス原人の小頭症の可能性の検討は、この解析が終わってから着手する。フローレス原人の歯の解析は予定通りに進み、一定の結果が出た。サンブンマチャンのジャワ原人の年代は、現地の層序が解明されつつあるので、信頼性の高い絞込みが可能となるであろう。台湾の成果についても、最初の論文をまとめる段階に達している。
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今後の研究の推進方策 |
優先課題としては、化石脳の容量測定について解析データの準備を完了する。サンブンマチャンのジャワ原人の年代については測定結果を待ち、うまくいけば成果をまとめ、何らかの問題があれば現地で再サンプリングを行う。また、当地域の層序と年代が判明しつつあることを受け、追加の原人化石発見を狙った発掘を行う。フローレス原人ついては歯の形態分析、台湾については化石群の年代的知見について成果を論文にまとめ、投稿する。フランスや中国で行われる人類進化学の国際学会に参加し、上記成果について発表する。
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