研究課題
化石脳の容量測定:昨年度までに基礎的な開発を終えた、不完全な原人頭骨化石からその頭蓋腔容量(脳容量の近似値)を正確に推定する新手法について、誤差の評価を行った。予想以上に小さな誤差で容量推定ができることがわかり、手法の実践性が確認された。現在、その成果を論文にまとめている。フローレス原人:フローレス原人の歯について、現代人や他の原人との大規模形態比較を進めた。現在、論文の最終段階の詰めを行っている。フローレス原人が発掘されたリャン・ブア洞窟上層の人骨について、保管しているインドネシアの研究機関と共同研究を開始した。また、フローレス原人の祖先を突き止める上で最重要と目される、フローレス島のソア盆地の人類遺跡で調査を継続しているオーストラリア・インドネシア隊から招待を受け、このグループの研究活動に参加することになった。ジャワ原人:原人の頭骨化石を過去に産出している中部ジャワのサンブンマチャンにて、3週間にわたる発掘調査を行った。人類の可能性のある歯の破片が2点見つかったほか、少数ながら石器が発見された。双方とも、過去に例がないか稀な、たいへん貴重な発見である。台湾:台湾本島と澎湖諸島の間の海底から、魚網に引っかかって発見された古代型人類化石(澎湖1号)の研究成果を発表した。台湾で初めて発見された古代型人類の化石であり、アジアの化石記録の空白の1つを埋めるものである。澎湖1号は下顎骨の右半分の保存のよい化石で、年代はおそらく19万年前以降、古くとも45万年前を越えないと推定される。そうでありながら、80~70万年前頃のジャワ原人や北京原人より顎が頑丈かつ歯が大きく原始的で、これらとは別の進化系統に属していた可能性が高い。この研究成果は、アジアにかつていた古代型人類の多様性を示すものとして、多数の国内メディアだけでなく、CNNをはじめとする海外メディアでも広く取り上げられた。
2: おおむね順調に進展している
全ての事項について、ほぼ計画通りに進んでいる。フローレス原人の歯形態など、一部に論文化が遅れているものがあるが、これらはデータの一層の充実をはかった結果であり、研究内容は当初目標よりさらに強化されている。化石脳の容量測定については、予定していた解析をほぼ終え、論文執筆の準備が整いつつある。フローレス原人の歯の解析をほぼ終え、その系統進化上の議論ができるようになった。サンブンマチャンでの野外調査では、上述の予想外の成果に加え、年代測定に有望と見込まれる新たな資料を入手できた。台湾については、成果を論文発表し、計画当初の目標をほぼ達成できた。
化石脳の容量推定の成果を論文化する。当初予定になかった新たな原人化石のCTスキャンデータの入手見込みがたったので、それについても容量推定を行う。十分な研究がされていない最古段階のジャワ原人化石数点について、現地側と協議の結果、日本でCTスキャン実施の基本合意を得たので、これを進める。ジャワ島サンブンマチャン地域の年代測定を進め、その結果をみつつ、調査成果の論文化の方向性を定める。サンブンマチャンよりさらに年代の若いジャワ島の別の調査地において、試行的な小規模野外調査を実施する。フローレス原人ついては、歯の形態解析結果を論文化する。リャン・ブア上層人骨の整理・研究を継続する。ソア盆地の調査隊とも連絡を密にし、今後の新しい化石発見に備える。台湾については、原人化石の年代をさらなる絞込みを中心に、共同研究を継続する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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