研究課題
最終年度で2つの主課題を完成すべく研究を行った。第1課題の相同組換修復阻害と重粒子線照射の併用療法に関する研究は, 昨年度の論文発表 (Hirakawa et al 2015) に続き、他のHsp90 阻害剤PU-H71とX線又は重粒子線との併用実験を行い、この薬剤が重粒子線との併用でもヒト癌細胞で放射線増感効果があること、正常細胞では増感効果が見られないこと、その原因がDNA二重鎖切断修復の2つの代表的な修復経路の両方を阻害していること、その細胞死が癌細胞のP53のステータスで違いがあること等を発見し、現在論文の (査読後の) 修正版を提出したところである。さらに新Hsp90阻害剤TAS116と放射線の併用研究も行い、この薬剤もある種の癌細胞特異的にX線又は重粒子線併用で放射線増感を起こすこと、その作用機序がDNA二重鎖切断修復の阻害に関係し、さらに併用効果はマウスの実験でも示された。これらの結果は、現在論文執筆中である。様々なHsp90阻害剤の中、TAS116は副作用も少ないとされ、放射線との併用においても臨床応用が期待される。第2課題の非相同末端結合阻害剤DNA-PK阻害剤と重粒子線およびX線の併用により、癌細胞を老化に導いて成長を抑制する研究では、細胞に毒性を与えない低濃度のDNA-PK阻害剤でも放射線増感を起こすことを発見し、その機構が予想されたDNA修復阻害ではなく、細胞周期の遅延に関係し、また特にP53非依存の癌細胞で、重粒子線併用により老化様の細胞が相乗的に増えていること等を発見した。これらの興味深い結果は、現在論文提出中であり、将来の癌治療への新しい方向性を示していると思われる。今年度中に他の化合物Genisteinと放射線の併用実験も行ったが、重粒子線とでは併用効果がなく、実験は終了された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
この科研費によって援助を受けた国際共同研究は、期間終了後も共同論文執筆、大学院生の交換訪問等で継続している。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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