研究概要 |
ACL損傷後急性期および増殖期・リモデリング期における靱帯治癒に関連する因子の動態を明らかにする目的で,ACL切断後のMMP-13,TIMP-1,α-SMA,IL-1β,Collagen type I,type III,およびVEGFのmRNAの発現の動態について独自に作製したラットACL,治癒モデルにて検討した.急性期(損傷後1,3,5日)における,MMP-13とTIMP-1のmRNA発現量を検討した結果TIMP-1においては,sham群と比較して損傷群においてmRNA発現量が有意に高値を示したが,MMP-13においてはsham群,損傷群に有意差は認められなかった.また,TIMP-1においては,損傷後5日群と比較し1日群において有意に高値を示し,時間経過とともにmRNA発現量が低下した.IL-1βの発現量においては,sham群,損傷群に有意差は認められず,IL-1βがMMP-13の発現を誘発している可能性が低いことが示唆された.α-SMAのmRNA発現量にも有意差は認められなかった.また,Collagen type I,type III,およびVEGFのmRNAの発現量に有意差は認められず,これらの因子は急性期以降に発現量が増加し治癒に関与する可能性が示唆された. そこで,増殖期およびリモデリング期(2,4,6週)におけるα-SMA、VEGFのmRNA発現量について検討した.その結果,α-SMAは2,4,6週経過時点全ての時期において実験群で増加した.VEGFは2週経過時点において実験群で発現量の増加が認められた.Collagen type I,type IIIのmRNA発現量の比較では,Collagen type IIIの発現量は実験群で2,4,6週経過の各期において増加した.各群におけるCollagen type I/type IIIの発現量の比率は,実験群においてCollagen type IIIの発現量が高い結果となった.急性期のACLの損傷治癒に関わる因子はMCLとは異なる動きが観察された。増殖期およびリモデリング期では血管およびcollagen増殖に関わる因子の増加が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな自然治癒モデルにより急性期および増殖期・リモデリング期における靱帯治癒に関連する因子の動態を明らかにする目的で,ACL切断後のMMP-13,TIMP-1,α-SMA,IL-Zs,Collagen type I, typeIII,およびVEGFのmRNAの発現の動態をはじめて明らかにすることができた。しかし,外力によるACL切断機器の完成には至っていない。継続して作製に努める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
大腿骨と脛骨の異なる回旋方向のストレスによりACLを切断させる装置を設計し作製したが,完全断裂に至らず現在改良中である.未使用額408,683円はその作製費として繰り越した. (1)ラット用前十字靱帯切断装置420,000円 (2)実験動物・飼育代82,000円 (3)薬品1100,000円(一次抗体、試薬、リアルタイム用試薬、プライマーなど) (4)実験用器具60,000円(スライドグラス、マイクロチューブ、手袋など) (5)物性試験550,000円 (6)旅費500,000円 (7)人件費200,000円 (8)その他96,683円 計3,008,683円
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