研究課題/領域番号 |
24310125
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
瀬戸 康雄 科学警察研究所, 法科学第三部, 部長 (10154668)
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研究分担者 |
鵜沢 浩隆 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 上級主任研究員 (60356566)
大沢 勇久 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (30370886)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テロ対策 / 分子認識 / 機器分析 / 生物毒素 / 吸着 |
研究概要 |
分子認識素子(リガンド)の標的毒素結合性能評価法として、ソフトイオン化質量分析(MS)法の確立を目ざし、毒物とリガンドとの非共有結合複合体の質量分析的検出を検討した。エレクトロスプレーイオン化-タンデムMS装置を用いて、黄色ブドウ球菌腸毒素B(SEB)と市販抗SEBモノクローナル抗体の混合物を分析したところ、SEBおよび抗体由来の多価イオンピークが観察されたが、複合体由来のピークの検出性は低いものであった。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型MSでは、SEBおよび抗体由来の分子ピーク以外に複合体由来の低いピークが認められた。表面プラズモン共鳴分析(SPR)法では、Biacore T-100を用いて、市販抗リシン抗体を共有結合させたCM3センサーチップに、リシンをアプライしたところ、明確な結合が観察された。 産総研鵜沢研究室(分担者)において、ラクトース、ガラクトースの還元末端誘導体をチップ上に固定して局在SPR法で結合能を評価したところ、リシン擬剤のRCA120に強い結合が認められた。科警研において、同様のチップを用いて評価したところ、リシンに強い結合が認められた。また、科警研において、ファージディスプレイ法を活用して、SEB結合性抗体様人工蛋白質である、単鎖可変領域断片(scFv)を調製し、Biacore T-100を用いて、SEBを共有結合させたCM3センサーチップにアプライしたところ、明確な結合が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子認識素子の性能評価法としての、ソフトイオン化MS法、SPR法、キャピラリー電気泳動(CE)法を確立中である。特に、リシンと糖誘導体との複合体を検出する方法として、現時点でSPR法のみであり、早急に他の評価法の有効性を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
分子認識素子の性能評価法として、提案当初のMS法、SPR法、CE法に加えて、ESI-イオンモビリティースペクトロメトリー法を検討する。複合体の検出が可能となれば、本技術のハイスループットな特徴を活かして、複合体生成能を測定する系が確立できる。 SEB結合性抗体様人工蛋白質scFv、リシン結合性糖鎖誘導体のレパートリーを増やして、リガンド最適化の選択枝を増やす。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験(標的毒素とリガンドの非共有結合複合体測定法の確立)の進捗状況が若干滞っているため、新規に調製した分子認識素子候補(糖誘導体、scFv)の性能評価が十分できていない。従って、分子認識素子レパートリー群の調製などのために費用が本年度中に使用できなかった。 非共有結合複合体測定法を早期に確立して、現在保有する分子認識素子候補の性能を評価し、その結果に基づいて、素子レパートリーの調製を精力的に実施するための必要な試薬、器具類を購入する。
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