研究課題
受精後個人ゲノム配列は変わらないので、加齢や生活習慣などの体内外環境の影響を受けて核内ゲノム高次構造が変化し、加齢につれてアルツハイマー病(AD)を発症すると考えられる。ADの発症と進行に関連する遺伝的危険因子の存在が推定され、SNPをベースとした大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome-wide Association Study)が行われてきた。その結果、700を超えるリスクSNPのほとんどがイントロンや遺伝子間にあることから、そのゲノム科学的意味づけの理解が困難となっている。そこで本研究では、リスク領域は核内ゲノム高次構造を介して機能遺伝子と相互作用すると仮説を立て、正常~発病~重症の病勢進行過程を説明するターゲット分子を同定する。H25年度は、Chromosome Conformation Capture-Sequence (3C-Seq)法を改良したTethered Conformation Capture(TCC)法を用いて、培養細胞核内ゲノム高次構造を解析し、染色体上を離れた遺伝子間相互作用を証明した。また神経病理学的に診断されたヒト凍結脳における遺伝子発現解析を行い、時間経過とともに解剖学的に病巣が進展する特徴的なAD脳の変動遺伝子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
染色体上は離れた転写調節機構をゲノム高次構造から解明するTethered Conformation Capture(TCC)法の基盤技術を培養細胞系で確立した。つぎに細胞特異的遺伝子発現を解明するために、神経細胞由来SK-N-SHならびにグリア細胞由来U-251MGにおいて、それぞれの細胞で高発現または低発現する遺伝子群をエクソンアレイによって選び、それらの核内相互作用を解析した。
TCC法の基本技術を確立したので、細胞ごとに変動する高発現/低発現遺伝子群と染色体上離れた遺伝子(ゲノム領域)とキメラを形成する遺伝子制御配列を同定する。既存のデータベースを用いて転写制御領域と相互作用する機能遺伝子群との関連をコンピューター上で抽出し、高度な情報学を駆使して実験から得られるAD脳の変動遺伝子生データを評価する。
培養細胞でTCC解析を継続すると共に、次世代シークエンサーによる凍結脳由来のDNA/RNA解析ならびに遺伝子発現の網羅的解析を遂行する。H25年度までに確立したTCC解析、遺伝子プロファイリングを実施するために検体数を増やし、信頼性の高いデータ取得を行う。主として次世代シークエンサーによる凍結脳由来のDNA/RNA解析および培養細胞試薬を購入する。DNA/RNA抽出と濃度測定、品質管理、ゲノム調製、ゲノム切断、キメラ遺伝子作製、等の業務を担当する技術補佐員を雇用する経費に一部を当てる。
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