研究課題
孤発性アルツハイマー病のリスク遺伝子の多くは、大規模GWAS (Genome-wide association study)で同定されたSNPの近傍とされている。しかし、そのSNPの殆どがイントロンか遺伝子間にあるため、生物学的意味が不明である。そこで、アルツハイマー病の発症や進行を説明するために、脳組織における遺伝子発現状態を直接解析する研究をおこなった。アルツハイマー病の2大特徴である老人斑と神経原線維変化を指標に、正常、中等度、重度の段階が病理学的にBraak分類される。Braak分類された脳の3カ所からRNAを抽出し、エクソンアレイ法によるmRNA半定量、ならびに次世代シークエンサーとRT-PCR法によるノンコーディングRNA解析をおこなった。71人の3カ所脳部位で健康脳から重症脳へ病巣の進展に伴って遺伝子発現量が変動するmRNAを8種類同定し,これらは大きく4つのクラスターに分けられ,相互に関連することが示唆された。つづいて行なったノンコーディングRNA解析では、脳病巣を反映するsmall RNAのうち有意に変動する候補マイクロRNAを数個見いだした。我々の生データおよび公開データベースを参照に、染色体上離れたイントロンと変動遺伝子との相互作用ならびにタンパクータンパク相互作用について情報学的に解析を行った。生物学的証明は今後の課題であるが、一つの方法として、培養細胞系を用いて分子生物学実験を行う。脳由来と思えるマイクロRNAが血液中で比較的安定に存在するので、その利点を生かしてアルツハイマー病の病勢をモニターする血液バイオマーカーとしての診断価値が期待される。臨床検体を用いて検証実験を開始するめどが立った。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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