研究課題/領域番号 |
24320030
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
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研究分担者 |
浅見 龍介 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部企画室, 上席研究員(兼)室長 (30270416)
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部企画課特別展室, 室長 (20249915)
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部保存修復課環境保存室, 室長 (60332136)
小澤 正人 成城大学, 文芸学部, 教授 (00257205)
能城 修一 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材特性研究領域, チーム長 (30343792)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一木彫像 / 樹種分析 / 近赤外分光分析 / VOC分析 |
研究実績の概要 |
5月16日に本研究の成果報告の一環として一般向けシンポジウム「仏像と木の交流―古代一木彫像の樹種をめぐって」を成城大学で開催した。研究協力者の金子が司会を務め、研究代表者の岩佐、研究分担者の能城、連携研究者の安部、研究協力者の藤井がそれぞれ発表し、会場からの意見や質問を踏まえて討議を行った。研究者を含め200名に及ぶ参加者を得た。さらに12月にはその報告書をかねて一般向けの図書として『仏像の樹種から考える古代一木彫像の謎』(東京美術)を刊行した。 国内で実施した調査は以下の通りである。①9月14日(月)~9月16日(水)山梨県南アルプス市所在寺社の木彫像調査。慈眼寺木彫像17躯、円通院木彫像3躯、上宮地八幡神社木彫像4躯、古市場若宮八幡神社木彫像6躯、②平成28年1月6日(水)京都国立博物館収蔵及び寄託作品の調査。③3月11日(金)~3月12日(土)静岡・南禅寺保管河津町谷津地区温泉堂木彫像2躯の調査。①は調書作成、樹種分析、近赤外分光分析、VOC分析を実施した。②は本格調査に向けての事前調査、③は調書作成のみを行った。また、静岡県南伊豆町の善福寺の秘仏(木造大日如来坐像)を開帳に合わせて見学した他、本研究と関連する展覧会の見学を上原仏教美術館、仙台市博物館、大津市歴史博物館、長野県立歴史館、あべのハルカス美術館、奈良国立博物館で実施し、情報収集を行った。 海外調査は9月1日(火)~9月6日(日)に中国の河南省と河北省所在の博物館を中心に木彫像及び関連作品の所在調査を実施した。 非破壊による樹種分析方法の確立のために行っている近赤外分光分析、VOC分析については、調査結果に基づいて適宜論文発表、学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シンポジウムを開催し、その報告書を一般図書として刊行することによって本研究の成果とその意義について研究者のみならず一般の人たちに発信できたことは、科研の成果を国民に還元できたという意味で評価できる。また、非破壊による樹種分析方法の確立のために行っている近赤外分光分析、VOC分析については、調査結果に基づいて適宜論文発表、学会発表を行った。特に近赤外分光分析については、針葉樹と広葉樹の識別を行える段階に達し、さらにヒノキとカヤの識別を実現できる見通しもついてきたといえる。 しかし、現地調査に関しては、予定していた箇所について十分実現できなかったこともあり、収集したデータ数は少なかったといえる。また、これまで蓄積してきたデータの多くが未公開であるため、その公開に向けてデータの整理と検討を進めたが、公開までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずはこれまで蓄積してきた未公開データの公開に努めたい。公開に際しては基礎的データの提示を優先し、それを経て、事例ごとに検討を加え、個別研究として順次公表していく予定である。 国内においては特に10世紀以降の木彫像の樹種データをさらに充実させて、用材認識の展開に関しての研究の精度を高めていく必要がある。また、地方所在の木彫像に関する樹種データも蓄積しつつあるが、さらに充実させ、用材認識における地域性の問題について検討を加えたい。 国外では、中国における唐時代以前の木彫像の残存率が極めて低いが、その所在情報は少しずつ集積してきており、継続して現地調査を行って行きたい。また、フランスのギメ美術館には敦煌伝来の木彫像が数多く収蔵されているなど、調査範囲を欧米の美術館・博物館に広げていく必要がある。さらに中国における栢に対する認識の実態、日本では7世紀の木彫像に使用されたクスノキは「楠」と「樟」で表記され、樹種としての区別はないのに対して、中国では明確に区別されていることの実態調査も実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査が十分実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
追加調査の旅費とデータ整理・入力の謝金として使用する。
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