研究課題/領域番号 |
24320039
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊東 信宏 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20221773)
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研究分担者 |
小嶋 亮 中部大学, 人文学部, 教授 (50410650)
新免 光比呂 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60260056)
奥 彩子 共立女子大学, 文芸学部, 講師 (90513169)
太田 峰夫 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (00533952)
輪島 裕介 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50609500)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | チャルガ / ポップフオーク / 演歌 / 東欧 / バルカン音楽 / マネレ / アラベスク / ターボフォーク |
研究概要 |
1989年の体制転換以降、旧東欧諸国には欧米の情報が流れ込み、文化の面でも急速な変化が起こった。その中でも注目すべき現象は、「演歌型」大衆音楽ともいうべき新ジャンルの登場である。本研究課題が対象とする「演歌型」大衆音楽とは、欧米のポップスの基本語彙であるベース&ドラムスを基礎としながら、発声、楽器法などの点で、民俗音楽の要素を暗示しつつ、テレビなどの媒体により大衆に浸透したジャンルで、とりわけ旧東欧地域におけるものが特徴的であり、ブルガリアの「チャルガ」、ルーマニアの「マネレ」、旧ユーゴスラヴィアの「ターボフォーク」などがその代表である。本研究は、これら旧東欧諸国における「演歌型」大衆音楽の生成と展開(または不在)について比較し、文化の接触と変容の問題に新しい視座を提供することを目的としている。 2013年度のフィールドワークについては、研究分担者および協力者が、ブルガリア、セルビア、ポーランドで調査を行った。これらの成果について、10月と1月に大阪と東京で研究会を開催し、5名が発表報告を行った。またベオグラードで開催された国際会議「東西分断を超えて」において研究代表者が口頭発表 "Chalga and Enka: parallel phenomena on both sides of Eurasia"を行った。この成果は、近々会議報告として出版される予定である。またUCLAにおいてブルガリア音楽の研究者に研究レビューを受けた。このほかポーランドの音楽に関するズビグニェフ・スコヴロン(ワルシャワ大学史学部音楽学学科教授)による講演 "Tradition and Modernity in the Music of Witold Lutoslawski"が研究会に続いて開催され、研究会メンバーも参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した計画のうち、現地調査、研究会の実施、国際学会での報告については、予定通り開催した(予定された研究会3回のうち1回については、学会の例会におけるゲスト講演という形で実現した)。これにより東欧バルカンの各国(チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、スロヴェニア、セルビア、トルコ)における調査が行われ、その調査に基づく報告も研究会で行われて、各国の状況が具体的に把握できた。 国内の学会でのセッションを予定していた点については、先方学会とのスケジュールがあわず断念したが、これは来年度以降に開催することで、より充実した内容となることが期待でき、本課題の目的にとってはマイナスにはならない、と考えられる。 以上の理由により、研究はおおむね順調に進展している、と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで東欧、バルカンの各国で調査を行い、「演歌型」大衆音楽の現状を具体的に把握することができた。引き続きこのような調査を続けながら、今後は本研究課題を次の3つの方向に向けて推進する予定である。 1)他地域の類似現象との比較:すでにトルコにおける「演歌型」大衆音楽について調査報告を行っており、2014年度からは新たにトルコ音楽の専門家にも研究分担者に加わってもらったが、タイやインドネシアなど東南アジアにおける類似の現象との比較を行うことで、バルカンでの状況をより立体的に把握することが可能になる、と考えている。今後、そのような分野の専門家にも研究会に参加してもらい、検討を始めたい。 2)国際フォーラムの開催:2015年度前半に本研究課題に関する国際フォーラムを大阪で開催し、国際的な民族音楽学、ポピュラー音楽研究に対して問題提起を行いたい、と考えている。セルビアでの国際学会において、大阪でのフォーラム開催について、若手研究者を中心に打診し、協力の約束を得ている。 3)研究成果の出版:本研究課題の成果については、通常の研究成果報告書の域を超えて、より一般的な共著書を出版したいと考えている。「演歌型」大衆音楽という研究対象は日本では他に例を見ないものであり、しかも音楽研究の全く新しいアプローチを啓蒙する格好の題材であり、一般的な書物とするのに相応しいと考えられるからである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、アルバイトを雇用し、研究会の準備などを行う予定だったが、各国での調査を優先し、結果的に謝金としての支出が減じたため、2013年度から2014年度に繰越金が生じた。次項に記すとおり、国際フォーラム開催準備のためのアルバイト雇用を2014年度以降に行うため次年度に使用する予定である。 2015年度に予定している国際フォーラム開催準備のためのアルバイトを160時間程度雇用する予定である。
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