研究課題/領域番号 |
24320130
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
坂田 聡 中央大学, 文学部, 教授 (20235154)
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研究分担者 |
薗部 寿樹 山形県立米沢女子短期大学, その他部局等, 教授 (10202144)
榎原 雅治 東京大学, 史料編纂所, 教授 (40160379)
岡野 友彦 皇學館大学, 文学部, 教授 (40278411)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域社会論 / 大堰川上・中流域 / 山国荘 / 宮座 / 由緒 / 生業 |
研究実績の概要 |
1.本研究の概要・意義・重要性 本研究においては、京都府の大堰川上・中流域地域、具体的には丹波・山城国境の広河原(京都市左京区)から黒田・山国・周山(以上京都市右京区)、日吉・園部・八木(以上南丹市)、さらには亀岡市域にかけての地域をフィールドにとり、16世紀~19世紀という長いスパンでの通時代的な考察を試みることによって、当該地域社会の内部における個別の村どうしの関係の実態及びそその変容、当該地域社会の内部における個々の村々の共通点と差異及びその変容、個々の村レベルを超えた当該地域社会全体の構造的つながりの実態及びその変容―という諸問題の解明を目指す。 2.本年度における本研究の内容と成果 本研究の大きな柱としては、現地調査とその成果をもとにした研究があげられるが、平成26年度は研究に重点を置いた。そのため、研究組織の組み換えを行い、全体統括班のもと、自然環境と生業研究班、村社会の構成原理研究班、村人の由緒と特権意識研究班の3班を編成し、研究を進めた。具体的には、現地調査にて撮影した文書写真をもとに、各研究班に関連する史料のデータベース化を進めるとともに、研究会を年に3回開催して、各班ごとの研究の進捗状況の報告や研究成果の中間報告を行うことで、成果の共有をはかった。 また、平成24年度、平成25年度における現地調査で、史料の残存量があまりにも膨大すぎて調査しきれなかった文書群や、平成26年度に新たに調査が可能となった文書群があるため、これらの史料について夏と秋の2回、現地補充調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正確に記すと、平成25年度末の状況と同様、(2)と(3)の中間あたりとなるが、昨年度末と比べると、やや(3)に近いといわざるをえない。その理由としては、これまで諸事情によって調査ができなかった山国地域の江口家文書、河原林家文書、新たに発見された南丹市日吉地域の大谷佐々木文書など、本研究を進める上できわめて重要な文書群の調査が可能となったことにより、これらの文書群の補充調査や写真撮影、翻刻、データ処理、読解等の作業に思いのほか時間がとられ、その分、各研究班による個別課題の具体的な分析に費やせる時間が少なくなってしまったという事情があげられる。 とはいえ、各作業班のメンバーは関連史料のデータを共有し、連絡を密にとり合いながら、責任者を中心にしてデータの分析作業を進めているところであり、民俗調査班の活動とも相まって、本科研費による研究の最終年度にあたる平成27年度のやり方次第で、この遅れは十分に取り返すことができると思われる。 なお、本年度の研究成果としては、研究代表者の坂田と研究協力者の吉岡拓(恵泉女学園大学・助教)の共著である『民衆と天皇』(高志書院)の刊行があげられる。これは、村社会の構成原理研究班、村人の由緒と特権意識研究班の研究成果を踏まえた著書であり、黒田・山国地域をメインフィールドに、本科研の調査によって得られた新出文書等を利用することにより、16~19世紀における有力百姓たちの由緒や特権確保のための営為が、結果として戦国時代以降も天皇の地位が存続した重要な要因となった事実を明らかにした。 また、昨年度同様、山国地域の古文書の翻刻作業の成果を『中央史学』38号誌上において、「史料紹介」として公表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本科研による研究の最終年度に当たるため、研究成果のとりまとめが求められる。だが、「現在までの達成度」の欄に記したように、本研究の推進にとってきわめて重要な古文書群の調査が可能となり、その調査・翻刻・データベース化等の作業も並行して行わざるを得ない状況となっている。 そこで、平成27年度においては、山国地域の江口家文書・河原林家文書、南丹市日吉地域の大谷佐々木文書の現地補充調査、翻刻、各研究班ごとのデータベース化等の作業をぎりぎりまで実施し、これらの文書群から得られた情報を、できる限り本研究の研究成果に生かしていきたい。 同時に、あまりにも欲張りすぎると、かえって肝心な本研究の研究成果の取りまとめに支障をきたす恐れもあるため、そのあたりのバランスを勘案しつつ、最終年度の研究を進めていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成24年度末の未使用額約61万円→平成25年度末の未使用額約59万円→平成26年度末未使用額約51万円という経緯からもわかるように、初年度に、後の使用を見越して残した未使用額が、少しずつ減少しながら今日に至ったということができる。したがって、平成26年度を単年度として見ると、ほぼ当年度予算の範囲内で諸経費を執行している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は本研究の最終年度にあたり、研究成果をさまざまな方法によって発信する必要に迫られる。したがって、そのための経費に前年度未使用額の一定部分を投じたい。 また、最終年度においても山国地域の江口家文書、河原林家文書、南丹市日吉地域の大谷佐々木文書の現地補充調査に赴く必要があるため、その旅費にも、前年度未使用額の一定部分を充当したい。
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