研究課題/領域番号 |
24320134
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
大友 一雄 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (30169007)
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研究分担者 |
西村 慎太郎 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90383546)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アーカイブズ / 近世史 / 藩政 / 松代藩 / 記録管理 / 真田家 |
研究概要 |
平成25年度は①藩内における職制ごとの文書管理システム、②藩庁外の役所と藩内の記録管理システムの関係性、③藩主文書と藩庁文書との関係性、④史料群構造と組織機能について検討を行なった。 具体的な基礎作業として松代真田家文書(真田宝物館蔵・国文学研究資料館蔵)の調査と分析、松代藩と関係の深い文書群の調査・分析を行ない、研究成果の報告会を実施した。文書調査整理班は真田宝物館所蔵の真田家文書の整理作業を7月6日~8日・12月14日~16日に、長野市立博物館蔵野本家文書の調査を10月23日~24日・12月18日に行なった。また、国文学研究資料館蔵の八田家文書の整理作業を継続的に行なった。 これらの研究成果として研究会を行ない2013年5月11日・12日には宮澤崇士「長野市立博物館の収蔵資料の概要」・降幡浩樹「真田邸土蔵の収納形態」・原田和彦「真田宝物館所蔵の文書と典籍について」・工藤航平「真田宝物館所蔵真田家文書の史料目録改訂作業と史料群構造」、9月28日~29日には浅倉有子「真田家の道具類管理について」・太田尚宏氏「真田家文書<家老日記>の種類と性格」・西村慎太郎「松代藩糸会所の機能と記録の作成・授受・管理」・種村威史「松代藩代官の文書管理とその特質」、2014年3月1日には福澤徹三「村方文書から見た勘定所元〆日記」・福田千鶴「藩主生母の格式をめぐる意思決定に関わる史料空間」の報告を得た。 藩政文書の記録管理システムを明らかにする基礎作業として未整理文書の目録化を進め、真田宝物館所蔵真田家文書・国文学研究資料館所蔵八田家文書など計8000点の史料目録を作成した。その成果の一部を『史料目録 第99集』として刊行した。 なお、データベースを効率よく運営するために391件(9万3千コマ余)の文書画像をリサイズした(国文研電子資料館「収蔵歴史アーカイブズデータベース」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
藩政文書の記録管理システムを明らかにする基礎作業として、文書調査整理班は未整理文書の目録化も順調に進んだ。とりわけ、国文学研究資料館蔵で未整理文書が多い信濃国埴科郡松代伊勢町八田家文書を整理し、『史料目録 第99集』を刊行できたことは大きい。また、これらの刊行成果は来年度国文研電子資料館「収蔵歴史アーカイブズデータベース」に横断検索ができるよう計画しているが、その準備を進めることができ、研究者のみならず一般利用の促進を行なう準備を整えることができた。その他、未整理となっている真田宝物館所蔵真田家文書の文書目録を作成することができた。 記録管理研究班は年間3回計5日間に及ぶ研究会を開催することによって、これまで十分に分かっていなかった松代藩内における職制とその文書管理システムが解明されてきた。主に家老や奥向の史料の重要性が指摘されたため、今後の利用の便を踏まえて、これらの画像公開をデータベース上で進めるべきであるという課題が析出された。また、藩庁外の役所と藩内の記録管理システムについては、既述の八田家文書を用いた分析によって、藩庁と御用商人との間での文書管理システムが判明した。 上記のうち、データベース構築班がデータベースの整備を継続的に進めることができた。 課題としてはいまだ史料の制約上、十分に判明していない職制とその記録管理システムがあり、また、真田宝物館に所蔵されている真田家文書(藩主文書)を総体としてどのように位置付けるかについては次年度の検討として遺された。 総じて、研究の進展もおおむね順調であり、一般利用を促進するためのデータベース整備や画像公開が促進できたことから(2)として自己評価を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も基盤整備のため、文書調査整理班は未整理文書の目録化を重点的に進める。その成果として松代伊勢町八田家文書の『史料目録』の刊行を目指したい。 記録管理研究班は年に3回の研究会と2回程度の現地調査を実施する。これまで解明されていない職制とその記録管理システムの解明を体系的に行なうと同時に、特に真田宝物館における調査は目録の作成とともに、真田宝物館に所蔵されている真田家文書(藩主文書)を総体としてどのように位置付けるかという課題に取り組んでいく。 データベース構築班は多くの利用を促進するため真田宝物館所蔵真田家文書と国文学研究資料館所蔵真田家文書の統合的なデータベースの構築方法の検討を行なう。これらの史料は歴史研究者や一般の利用も想定されるため、国文研電子資料館「収蔵歴史アーカイブズデータベース」での画像公開を行なう。 じょうきの研究成果については広く研究者や一般と共有するため、出版物としての刊行を進めるため、本年度からその準備を行ないたい。また、長野県の貴重な歴史資料であることから、地元の郷土史・社会教育などに貢献できるよう地元でのシンポジウムないし講演会を開催することを計画したい。これによって研究の裾野が広がることは疑うべくもない。 上記計画のうち、年3回の真田宝物館における未整理文書の調査及び年3回の研究会の旅費を中心として、未整理文書の目録化・データベース構築のアルバイト謝金に充てる。作業のためのパソコンや書籍購入を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は主に3点である。 第一に国文学研究資料館蔵松代真田家文書のマイクロフィルムのデジタル化作成の経費が安価であったこと。第二にアルバイト謝金が予想よりも少なかったこと。第三に調査の出張人数が当初より少なかったこと、による。 国文学研究資料館蔵松代真田家文書のデジタル化とともにその作業の後にリネームやリサイズを行うため、データベース構築班のアルバイト謝金に当てる。
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