日本に固有の問題とされる「過労死」については、近年職場のメンタルヘルス上の問題としてますます注目されており、医学的、心理学的検討が進められているところだが、現在のところ、なぜ過労死するほどに働くのかという問題については、日本人の国民性などが指摘されるものの、実証的にはほとんど検討が進んでいない。このため、行政を中心にさまざまな施策が進められているものの、抜本的な過労死防止策がとれていないのが現状である。本研究は、「過労死」について、特に長時間労働の発生メカニズムに着目し、諸外国(フィンランド、ドイツ、米国、中国、韓国)と日本の比較検討から、働く文化の4層10次元モデルを構築し、社会文化的視点から長時間労働さらには過労死発生の心理社会的メカニズムを実証的に明らかにし、有効な長時間労働抑止、過労死防止策を提案することを目的とするものである。 本年度は最終年度であることから、これまで収集したデータを分析、考察し、その一部を28th International Congress of Applied Psychologyにおいて‘Six nation comparative study on the psycho-social mechanism of working long hours.’のタイトルで発表した。翌27年度にも14th European Congress of Psychologyにおいて発表を予定している(Six nation comparative study on the psycho-social mechanism of depression in the work place. Accepted)。また、さらに詳細な考察のため、米国ミシガン州フリントおよびフロリダ州タンパにおいて労働者の面接調査を行った。これらのデータは本助成事業終了後の27年度以降にも継続して分析、考察を行い、有効な長時間労働抑止、過労死防止策の創出に努める予定である。
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