研究課題/領域番号 |
24330227
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岐阜女子大学 |
研究代表者 |
梶山 雅史 岐阜女子大学, 文化創造学部, 教授 (60066347)
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研究分担者 |
坂本 紀子 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40374748)
佐藤 幹男 仙台大学, 体育学部, 教授 (30142904)
前田 一男 立教大学, 文学部, 教授 (30192743)
須田 将司 東洋大学, 文学部, 准教授 (00549678)
新谷 恭明 九州大学, 基幹教育院教育実践部, 教授 (10154402)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本教育史 / 教育会 / 帝国教育会 / 地方教育会 / 教育情報回路 / 教育統制 |
研究概要 |
平成24年度の研究テーマは「自律性への隆路」とし、時代としては主として1880年代から日露戦争後まで(1920年頃)を対象とした。地方教育会は地方の自律的な結社として誕生し、雑誌、講習会、集会を通して、多様な啓蒙活動も行った。しかし1890年頃から次第にネットワーク化が進み(全国教育会、各地方別の教育会などの広域の教育会との重層化)、また教育行政の補完的機能を担うようになる。こうした構造的な転換の中で、教育会の機能も転換を迫られた。後の時代に教育統制団体へと進む契機が、この時代に準備されていく。とはいえ、この段階においては、地方教育会はまだ自律的な活動を展開する余地を残していたことが仮説として考えられる。 こうした仮説を明らかにするため、全国教育会及び地方教育会の構造転換と機能転換の分析を行い、全国各地において自発的結社として発足した教育会が、自律性を失っていく過程を明らかにした。より具体的には、(1)全国=中央教育会一地区連合教育会一府県教育会一郡市教育会という教育会組織の重層化が、教育会の機能にもたらした変化、(2)日露戦争に象徴される日本の社会構造の変化、また内務省と文部省との地方政策の中で、教育会の機能変容を分析した。たとえば、明治末年の東京においては、中央教育会としての帝国教育会と連動した全国聯合教育会、全国小学校教員会議が開催され、この下に関東聯合教育会、さらに東京府教育会、東京府郡区聯合教育会、東京市教育会、郡区教育会、町村教育会という構造があったが、主要なメンバーは重複していたことが判明した。別々の組織でありながら連動して動く組織体が出来上がっていたのである。 本科研全体の研究活動としては、3回の研究会(7月、11月、1月)と学会報告(9月)を行った。この他、研究分担者は種々の研究成果報告を行った。(750字)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、全国教育会及び地方教育の1920年代までの動向を主たる研究対象とした。しかしこれと平行して、大日本教育会及び地方教育会が解散する1940年代及び大日本教育会が解散する1947年以降の教育団体の動向の分析を行った。これは本来、本科研の3年目の研究課題であるが、この研究を前倒しして実施することにより、研究上の課題意識をより鮮明にすることができた。 後者の研究に関しては、平成25年3月に中間報告書を刊行することができた。 結果的に、平成24年度の研究計画の一部に多少の遅れが生じたものの、7地域において1940年代の解散期に至るまでの基本年表と基礎史・資料一覧表を作成することができた。以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は「教育統制への道」をテーマとし、1920年代から1930年代までのおよそ20年間を対象として研究を進める。この時期、澤柳政太郎が帝国教育会会長に就任し、地方教育会と帝国教育会を連合体に組織する動きの中で、1919年に第1回帝国連合教育会が開催された。澤柳の指揮した帝国連合教育会の活動には、教育専門家の職能集団としての教育会の機能、その可能性を最大限に追求しようとする動きを見てとれる。しかしその一方で、1929年の教化総動員運動の実施、国民精神作興、国体観念培養などが唱えられ、全国の教化団体が総動員され、教育会も教化総動員運動の重要な組織として組み込まれていく。 研究の第一のポイントは、大正時代の相対的にリベラルな社会的風潮を受け、郡市教育会を中心として大正自由教育が導入されるが、「ファシズムを支える社会的基盤としての教育会」(小川正人)へ急転回する過程の分析である。 この転回過程については、全国的に見たとき、いかなる転回がなされたのか、各県レベルでの分析を行う必要がある。 第二のポイントは、時代が急転回していく中、教育会による教員に対する統制が浸透していくプロセスの分析である。これを明らかにするために、教育会雑誌の質的な分析、各種講習会・講演会の分析を行う。これらの作業を通して、教育統制が浸透していくプロセスをいっそう鮮明に解明することができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度と比較して、研究費は90万円ほど低くなっている。このため、下記に示すように、めりはりをつけた仕様計画を立てている。 旅費について。全体研究会は、これまで研究代表者が勤務していた東北大学において開催してきた。しかし、研究分担者の移動があったため、今年度は東京において研究会を開催する。このことにより、研究会開催のための旅費は20パーセント程度、縮減できるものと考えている。 設備について。現在の研究組織は、前科研(研究代表者・梶山雅史、基盤研究(B)平成21年度~平成23年度、「1940年体制下における教育団体の変容と再編過程に関する総合的研究」)を引き継ぐものであり、新たな設備費として大きな出費をしない。 その一方で、研究成果公表のための予算は確保したい。平成24年度に中間報告書を上梓したが、今年度も研究成果を継続して公表する予定である。 翌年度への繰り越しとなった基金助成金について、 九州、沖縄地域の研究推進において、調査日程上、翌年度にわたって複数回出張し、調査・資料収集を行う必要があり、研究分担者達が翌年度研究費と合わせて、継続して研究調査を敢行する。
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