研究分担者 |
山元 隆春 広島大学, 教育学研究科, 教授 (90210533)
竹村 信治 広島大学, 教育学研究科, 教授 (80145705)
河野 智文 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70304144)
高旗 浩志 岡山大学, 教師教育開発センター, 准教授 (20284135)
守田 庸一 三重大学, 教育学部, 准教授 (60325305)
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研究概要 |
本研究は,既有の知識や情報と結びつけて推論したり,批評したりしながら読書行為を行う「生産的な読み手」を育成することを我が国の国語科教育とりわけ中等教育段階の読みの学習指導が取り組むべき教育課題として設定し,生産的な読み手育成のための読解力と授業力の診断のためのシステムを開発することを目的とするものである。こうした目的に照らし,本年度は次の二つの研究課題に取り組む計画を立てた。課題1)高校国語科の読みの4領域(評論・小説・古文・漢文)に沿った「生産的な読み手」の読解モデルおよび授業モデルを提示する。課題2)モデルに沿って,学習者の生産的な読みの能力を測定する調査問題を4領域について作成し,調査を通して生産的読み手育成の観点から中学生・高校生の読解力の課題を診断的に明らかにする。 本年度の研究成果は次の通りである。まず,課題1)の読解モデルの検討に関しては,ヴァン・ダイクとキンチュの読解モデルに照らして,国際的な学力調査PISAにおける読解モデルおよび調査問題,文部科学省による学力・学習状況調査における読解力の調査問題を検討し,中等教育における4つの読解領域(評論・小説・古文・漢文)に共通する読解モデルの検討を行った。また,授業モデルの検討に関しては,先駆的な実践者の授業をいくつか観察し,記録した。次に,課題2)に関して,読解モデルに沿って,4領域で高校2年生を想定した読解力の調査問題を作成するとともに,パイロット調査を実施し,調査問題の妥当性,評価の枠組みおよび基準,高等学校現場に対する調査問題の持つメッセージ性の検討を行った。我が国の国語科における読解力モデルは,大学入試問題に依存する側面が強く,そこで測定される読解力には明示的な言語情報の処理への偏りがある。本年度の研究で,認識力や批判的思考力をも取り込んだ読解モデルを構想し,具体的な調査問題として表し得たことは一定の意義がある。 また,中等教育における生産的な読み手の育成を実現している授業実践例を集積するため,web上で稼働するデータベースによる登録システムを開発した。次年度において成果を得ることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1)については,これまでの学力調査の検討を通して,読解モデルを構想するとともに,先駆的な実践者による授業の授業観察を行い,授業モデルの検討を行うことができた。研究課題2)に関しては,評論・小説・古文・漢文の4領域について,調査問題を開発するとともに,ほとんどの領域でパイロット調査を実施し,次年度に実施する本調査の準備をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題1)の授業モデルの構築のため,web上の授業実践登録システムを稼働させ,生産的な読み手を育成する授業実践例の収集を行う。研究課題2)に対応した学力調査の本調査を行い,高校2年生の4領域の読解力を診断するとともに,評価基準を作成する。また,研究課題3)として,学力調査問題を活用した,教師(学校現場の教師と教育実習に行く学生)の授業力を診断・評価する調査の開発に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,研究代表者および分担者による理論的な研究が中心となったため,研究協力者である先駆的な実践者の研究打ち合わせ会議への出席がなかった。また,授業モデル検討のための先駆的な授業の観察も広島県内にとどまった。来年度は,本調査の実施のみならず,研究協力者である先駆的な実践者による授業の観察および授業分析を進めるとともに,授業者の会議への参加を求める。また,web上のシステムの開発も行う。
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