研究課題
今年度は(1)ラフパスで駆動されたある領域で定義される反射境界条件をもつ微分方程式の解の研究、(2)Poleを持ち回転対称なリーマン多様体で定義されたループ空間上のOrnstein-Uhlenbeck作用素のスペクトルギャップの漸近挙動の研究を行った。(1)について説明する。極めて不正則なパスで駆動された微分方程式の定式化にラフパスの概念が有効であるが、法線方向への反射などで解がある領域に閉じ込められる方程式の研究はSkorohod方程式を合わせて考えねばならず、従来の枠には入らない。この方程式を定式化しかつ解の評価を与えた。更に、ラフパスがgeometricであるときは、普遍的可測な解写像が存在することを示した。確率過程への応用を考えるとこれは重要な結果である。もちろん解の一意性、連続性定理が証明できればさらに望ましい。この解写像の分布の研究を継続中である。反射壁の微分方程式は過去の道に依存した方程式と見ることもできる。そのような観点からの研究も重要であろう。(2)の研究は、前年度に双曲型空間で行なっていた研究を回転対称な枠組みで拡張した研究である。この証明では、ループ空間上でのある対数ソボレフ不等式の成立が重要な役割を担う。このことを考慮し、対数ソボレフ不等式が成立している有限次元空間での証明(これにより無限次元空間での証明の考え方がわかりやすくなる)も行った。ループ空間で対数ソボレフ不等式を証明するには熱核の対数微分の評価が必要になる。回転対称とは限らない負曲率の空間で同様なことが成立するはずなので、その証明にも取り組んでいるところである。技術的には、これ以外にループ空間上のある末尾確率の評価を新たに与える必要もある。この研究にも取り組みたい。
2: おおむね順調に進展している
反射壁の微分方程式の解写像のひとつとして普遍可測写像が取れることがわかったことでその法則を研究できることがわかったことは、将来の研究につながる意味のある成果である。スペクトルギャップの漸近挙動の研究もある程度一般の場合に示すことができ、負曲率一般の場合にできるかもしれないという期待がもてるようになった。
係数の正則性が落ちる経路依存のラフ微分方程式、負曲率多様体上の熱核の対数微分の評価の研究を更に推し進めたい。構成的場の量子論にあらわれるハミルトニアンの研究に関しても新たな視点から残された固有値の下からの評価を推し進めたい。
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Stochastic Processes and their applications
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.spa.2015.03.008
Springer Proceedings in Mathematics & Statistics
巻: 100 ページ: 1, 23
10.1007/978-3-319-11292-3_1
http://www.math.tohoku.ac.jp/~aida/paper/paper.html