研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き, (1)ユークリッド空間の領域で定義された反射境界条件のラフパスで駆動された微分方程式(rough differential equation)の解の性質の研究、(2)リーマン多様体上の基点付きループ空間上のOrnstein-Uhlenbeck作用素のスペクトルギャップの漸近挙動の研究、(3)1次元の非整数ブラウン運動で駆動される確率微分方程式の解の近似の漸近挙動、(4)経路依存の確率微分方程式の解のオイラー近似などの研究を行った。(1), (2)については、具体的には以下の通り。
(1)この方程式の解は一意とは限らないが、普遍可測写像のバージョンが存在することを前年度に示した。境界が滑らかな時は、この解写像は滑らかなパスの所で連続であることを示した。これにより、ラフパスが非整数ブラウン運動などのときに、通常の確率微分方程式の場合と同様なサポート定理が成立することがわかる。領域の境界が滑らかでない場合、解の存在が示されている領域には、ある制限(境界での法線ベクトルがあまり動かない)という不自然な条件があるため、この縛りをなくすべく研究をしている。また、一意性についても考察を行っている。
(2)回転対称な計量を持つリーマン多様体上のループ空間で定義されたOU作用素のスペクトルギャップの漸近挙動が測地線におけるエネルギー関数のヘッシアンで決定されることを示した研究である。内容的には前年度と変わりが無いが、大偏差原理を用いる部分の証明を改良した。回転対称とは限らない場合を含めるため、熱核の対数微分の評価も行っている。
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