研究分担者 |
田中 直樹 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00207119)
小林 孝行 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50272133)
久保 隆徹 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 講師 (90424811)
菊地 光嗣 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50195202)
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研究概要 |
本年度は, 有界領域における相転移を伴う非圧縮性2相流の平衡解のLp安定性およびLp大域適切性を解析した. 有界な2相流体において初期相を十分球に近い有限個の部分で与える. Lp解の局所一意存在は, 昨年度に証明済みである. 符号を反転させたエントロピー汎関数が所謂リヤプノフ関数となり, 平衡解は, 0流速, 定温度, 部分領域がすべて同じ半径の球となる. 半径の大きさは質量保存則より, 温度は全エネルギーによって決定される. 部分領域が互いにまた境界に接触しないことを仮定する.平衡解の回りでの線形化問題は時間発展方程式で表され, 解析半群を生成し, 最大Lp正則性をもち, レゾルベント作用素はコンパクトとなる. 生成作用素は, 部分領域が連結, 即ち個数が1つの場合は正の固有値を持たず, 非連結, 即ち個数が2つ以上の場合は個数をmとするとm-1個の正の固有値を持つ.それゆえ, 初期相が1つからなる部分の場合は安定, 初期相が2つ以上からなる部分の場合は不安定という結論が得られた. これは, 相転移を伴わない非圧縮性2相流とは異なる結果であることに注意する. 相転移を伴わない非圧縮性2相流の場合は, 初期相の個数に関係なく, その生成作用素は正の固有値を持たず, 部分領域が互いにまた境界に接触しない仮定の下では安定となる. さらにLp大域適切性についての解析を行った.一様球条件の下で, 初期状態が平衡解に近ければ, Lp解が時間大域的に存在することを証明した. 証明においては, 重み付き最大Lp正則性を応用することにより, 解軌道のコンパクト性が示せる点が鍵である. さらに, この結果を表面張力が温度に依存した場合及び過冷却を考慮に入れた有界領域における相転移を伴う非圧縮性2相流モデルに発展させた平衡解のLp安定性およびLp大域適切性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は, 相転移を伴う非圧縮性2相流の基本である, 各相で定密度, 表面張力が定数のモデルに対し, 線形化問題のLp最大正則性, 非線形問題のLp局所可解性について, 摂動層領域と有界領域双方の場合の解析を行った. 平成25年度はこの結果を受けて, 同モデルの平衡解のLp安定性とLp大域適切性を証明することを目標としていたが達成できた. さらにこれまで定数としていた表面張力を温度に依存する変数係数とし, 過冷却現象を考慮に入れた相転移モデルの平衡解のLp安定性とLp大域適切性の証明を行うことができ, 研究は順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
水蒸気と水の間の蒸発・凝縮, 水蒸気と氷の間の昇華・凝結現象も相転移であり, これらの相転移を伴う自由境界問題を考えると, 水蒸気が圧力の変化により体積が変わる圧縮性のため, 流体方程式が圧縮性Navier-Stokes方程式となり, 圧縮性―非圧縮性の2相問題を考察することになるためこの場合の解析を行う. 流速についてはこれまで同様放物型であるが, 密度について双曲型の時間発展方程式となり解析は困難となる. 流速, 温度, 高さ関数に加えて, 密度についても連立時間発展方程式と見た系を考えると, レゾルベントパラメータを十分大きく取ると系全体として放物型となり, 指数に制限がつくものの最大正則性に基づくこれまでの手法が適応できると予想する.
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