小笠原諸島と琉球列島の陸貝群集の化石、現生試料の研究から、過去の環境変動を明らかにし、それが群集に及ぼした影響を調べた。炭素、酸素同位体比分析と殻の形態解析の結果から、最終氷期末の約1万年前に、植生が湿性なものから乾性なものへと急速に変化し、それによる絶滅と種構成の変化が起きたことが示された。小笠原では人の入植した300年前以降にも大きな植生の変化があり、それに伴い群集構成はさらに乾性的なものにシフトした。過去には現在よりも湿性な植生が分布し、その環境を好む陸貝群集が成立していたと考えられた。陸貝群集の保全には、上記群集の変化を考慮に入れる必要がある。
|