研究課題/領域番号 |
24360245
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
安藤 正雄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80110287)
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研究分担者 |
古阪 秀三 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60109030)
平野 吉信 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40355904)
浦江 真人 東洋大学, 理工学部, 教授 (10203598)
渡邊 朗子 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (80286632)
池尻 隆史 近畿大学, 建築学部, 講師 (10408718)
蟹澤 宏剛 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00337685)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 建築生産 / 発注方式 / デザインビルド / CM / アーキテクチャ |
研究概要 |
1.日本・欧米の関連標準契約約款の分析:日本型DB方式の標準契約約款とみなしうるBCSの標準契約約款は、リスク・責任の布置に関する限り、日本における設計施工分離方式の標準約款である四会連合標準契約約款と大差なく、欧米のDB方式のそれとは大きく異なることをすでに明らかにしている。続いて、米国における新しいDB方式であるBridgingについてその標準契約約款の分析に着手したところである。 2.日本型DB方式(設計施工一貫方式)の適用条件・対象に関する分析 実プロジェクトのデータにもとづき、ものづくり経営学で用いられている指標(総合品質・生産性・リードタイム)により、日本型DB方式を最も有効に適用できる条件・対象を明らかにしようと試みたが、望ましい水準の詳細データをそろえることが困難であることが判明した。現在は、より簡便な調査フォーマットを検討中である。 3.市場縮小化における日本型DB方式の持続可能性に関する検討 市場縮小化の欧米においては、発注者の権能が相対的に拡大し、Bridging、Novationなどの手法により、DB方式の採用が増大している。これらについて文献調査、ヒアリング調査を行った結果、次が明らかになった。すなわち、欧米におけるDB方式はその適用対象が高リスク・ハイエンドの建築プロジェクトに移行しており、その意味で日本型DB方式と同様の分野の手法となったといえる。しかし、設計に関する受注者の裁量を制限したままリスクの大半を受注者に転嫁するこれらの方式は発注者の利益確保に資するとはいえ、受注者の能力拡大にはつながらない。よって、日本型DB方式の持続可能性を考える上では、レント獲得機会を保持した独自の進化経路を探索する必要があることが明らかとなった。 なお、これに関連して日本型DB方式にふさわしいインテグラル型BIMの必要性、およびその条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、日本型DB方式は高リスク・ハイエンドな建築プロジェクトに適用されることによって、建築産業・企業の能力構築と技術革新の源泉となっているとの仮説から出発している。このことを理論的に証明するために、本研究ではリスクと関係レントという概念を用い、継続的成長とコンテクストの下ではレント獲得と引き換えにリスクの引き取りが可能であることを明らかにした。成長の終焉は日本型DB方式の持続可能性を明らかに脅かすものであり、そのため、現在の状況下でも日本型DB方式の適用がなお有効である分野・適用対象があることを実証する必要があるが、これに関しては詳細データの取得にやや困難が生じている状況である。今後、より簡便な方法を検討するが、これまでのヒアリング等から実質的な検証は実現できていると考える。一方、市場縮小化、欧米で顕著なDB方式への傾斜(Bridging、Novation等)は、発注者の利益保護を極大化する方式であり、産業・企業の能力構築や技術革新の促進には資することがないことを明らかにしている。 以上の成果は建築生産論、産業論に包括的、かつ斬新な視点を用意したものであり、今後の方向性を見出すうえで十分な説得力を持つ。現在、経済学者と連携してこれらの成果をまとめ、今年度前半に「建築ものづくり」と題する単行本を刊行する予定である。これにより、学術的な成果を公表するばかりではなく、広く社会に還元する機会が得られるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
3カ年の研究期間の最終年度にあたる本年度当初は、6月刊行予定の「建築ものづくり」の刊行(有斐閣)に全力を注ぐ予定である。 そのうえで、残る期間に次のことを行い、これまでの成果とまとめて報告する予定である。 1.DBに関連する日米欧の標準契約約款の補足的分析、および論文の刊行。 2.縮小経済下でもなお有効に適用可能な日本型DB方式の適用条件と対象に関する検討。 3.日欧米の研究者・実務者との意見交換による、日本型DB方式の成立と持続可能性、および欧米におけるDB方式の新しい潮流に関する論点の整理、意見の集約 4.日本型DB方式に適したインテグラル型BIMのあり方に関する検討
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に計画した「実プロジェクトによる日本型DB方式の適用条件・対象に関する分析」の部分において、予定した詳細データの収集が困難であったため、調査方法全体を見直した。結果として、分析作業が未然に終わり、作業補助のための謝金の使用ができなかった。 平成26年度には、前年度に実施できなかった実証的分析を行う予定である。ただし、東日本大震災の影響による労務費・建設物価高騰、および東京オリンピック特需のため、需給バランスの大きな変動が短期的に現象しており、現在進行中のプロジェクトのデータは再現性に乏しいと考えられる。よって、調査方法・内容のさらなる変更も考慮しているところである。
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