研究課題
昨年度に引続き、複製因子とクランプの複合体の構造解析を行った。本年度は複合体を形成する上で、より安定な条件をゲル濾過、画像解析、構造解析の結果から検討した。またDNA基質を変えることで受ける影響等を調べた。画像解析、構造計算に於いてはベイズ統計を用いた解析ツールを導入し、画像及び立体構造の分類をこれまでより厳密にすることで、構造、組成がヘテロな系に対応できるように計った。その結果FEN-Lig-PCNA-DNA複合体について、構成因子のほぼ全てを可視化することに成功し、結晶構造等を当てはめることで原子モデルを構築することに成功した。この他、NucS-PCNA-DNA複合体の解析を行い、分担者白井によって得られたNucS―DNA複合体の結晶構造と比較することにより、複合体モデリングツールによって構築した予想モデルを指示する平均像を得ることができた。PolDに関しては2つのサブユニットを等量含む最適な精製条件を見いだし、PCNA及びDNAとの複合体をゲル濾過によって精製した。また新たに導入した構造計算ツールは、ベイズ統計を利用するため、これまでより段違いの計算量を要する。これに対処するために64コアのワークステーションを導入した。現在はクラスター化することで、さらに収束条件の探索の高速化を検討している。既に試験的に小規模なシステムを構築し、ほぼ予想通りに高速化されることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
4者複合体の解析が進展し構成因子を全て可視化することに成功した。特にDNAに関してはそのほぼ全長を可視化で来た点は注目に値する。この構造は異なる複数の複製因子をクランプ上に保持し、且つDNAも捉えた最初の例であり、切換えの機構を考える上で極めて重要である。凍結試料の解析も進行しており、進展の具合は概ね順調である。基質の違い、変異体による差異なども明らかになってきている。更にNucS-PCNA-DNAや、PolD-PCNA-DNA等、新規の試料についても解析が開始された。
現在、最も進展しており、且つ生物学的意義も高い、FEN-Lig-PCNA-DNA4者複合体の構造解析を中心に進め、複製因子の切換え機構を考察、誌上発表の準備を進める。またFEN-PCNA-DNA 3者複合体に関してもDNA、FENを更に明確に可視化する。この複合体は4者複合体の解析の重要なレファレンスであることに留まらない。既にPol-PCNA-DNA及びLig-PCNA-DNAを我々が解析しているので、本複合体を解析することで、ラギング鎖複製における重要な複合体の3つを全て解くことの意義は大変に大きいので早急に進める。またフラップの可視化においては、DNAナノ構造体による標識等も検討する。またDNA基質や複製因子の変異体によってどのように複合体形成、安定性、構造が変化するかを検討していく。
均一な試料作成のために必要な合成DNA探索等が比較的効率良く行え、また構造解析用計算機が交渉の結果及び購入時期などにより、当初の予定より高性能なものがより低価格で購入できた。逆にプロジェクトの進行の過程で、ある程度の性能を有した実体顕微鏡が必要となり26年度内の購入を検討したが、27年度開始早々に購入することを決めたため、次年度使用額が生じた。
試料観察や電子顕微鏡の電子銃交換等のメンテナンス作業に必要な実体顕微鏡を購入する。
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