研究課題
基盤研究(B)
アフリカツメガエル発生過程において、Ca^<2+>検出蛍光プローブGECOやGCaMPを用いて観察された、脊索形成、神経管形成時の細胞内Ca^<2+>動態の制御機構を細胞間相互作用の観点から探るための実験を行った。すでに我々がノックダウン実験で細胞内Ca^<2+>上昇の頻度が低下することを見出していたプリン受容体P2Y11はATPをリガンドとすることから、細胞外ATPがCa^<2+>上昇の引き金になっていることを想定し、1)ATPの可視化、2)ATPの枯渇実験を試みた。1)についてはルシフェラーゼによる発光を用いたATPの検出を試みたが、胚を用いた場合、Ca<2+>上昇の持続時間が1分程度であるのに対し、発光検出に必要な露光が10-20分程度という長い時間を要すること、単離した組織(外植体)を用いた場合、胚からの組織切除時に生じる細胞破壊によって細胞内からATPを放出させ、バックグラウンドが非常に高くなることなどの問題点が明らかとなった。現在、ATP検出蛍光プローブATeamを胚に発現させて直接検出することを試みている。本来、ATeamは細胞内ATPを検出する目的で開発されたものであり、細胞外ATP検出のために最適化するため、同分子を細胞膜に提示させ細胞外ATPを検出できるものへと改変を進めている。2)については、アフリカツメガエルから、細胞外ATPをADPおよびAMPへと加水分解する酵素NTPDaseのcDNAをクローン化し、同分子を胚細胞に発現させることにより、細胞外ArP枯渇による細胞内Ca^<2+>動態への影響を観察することを試みている。現在のところ、脊索形成、神経管形成において細胞外ATPを枯渇させると、細胞内Ca^<2+>上昇は著しく抑えられることがわかった。現在、ATP枯渇がどのように細胞形態、組織間相互作用に影響を与えるかについて、細胞極性や細胞骨格動態などの観点から検討中である。
2: おおむね順調に進展している
細胞外ATPの可視化については技術的な問題で克服すべき点が多いが、ATP枯渇実験はNTPDaseの発現実験で計画通りに進み、発生過程での細胞外ATPの役割が明らかになりつつある。
ATPの枯渇実験から細胞外ATPは細胞内Ca^<2+>動態の制御に必須であることが明らかになりつつあるが、同時に細胞極性、細胞形態形成のおけるCa^<2+>動態の関与については慎重に検討する必要がある。今後はCa^<2+>上昇によって、その下流で引き起こされる生化学的変化(例えばミオシン軽鎖タンパク質のリン酸化など)も併せて解析していくことが必要になるだろう。
現状では細胞外ATP検出の時空間的分解能が十分に得られていない。そのため、高感度、高分解能で細胞外ATPを検出するために顕微鏡システムに開口数の大きな対物レンズを装備する。同時に、生化学的手法でATPを検出するためのキットを購入するほか、遺伝子工学によりATeaMなど候補となる遺伝子コード型ATP指示蛍光タンパク質を数種類選んで、高感度に細胞膜状に提示できるよう改変を行う。
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