研究課題/領域番号 |
24390209
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
矢野 聖二 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (30294672)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺がん / 骨転移 / イメージング / ALK阻害薬耐性 / BIM遺伝子多型 / EGFR阻害薬耐性 / ボリノスタット / 個別化医療 |
研究概要 |
ヒト小細胞肺がんSBC-5をNK細胞除去SCIDマウスに静注することで多発骨転移を含む多臓器転移が形成されることを既に報告しているが、今年度はSBC-5にluciferase遺伝子を導入し骨転移を含む多臓器転移を発光で検出し定量できるイメージングシステムを確立した。現在PI3K/mTOR阻害薬など分子標的薬の転移抑制効果を検討している。さらに、SCIDマウスに胸腔内移植することで肺腫瘍とがん性胸水を形成するヒトEML4-ALK細胞株を樹立した。さらに、この高胸水産生性株にluciforase遺伝子を導入し、肺腫瘍およびがん性胸水を発光で検出し定量できるイメージングシステムを確立した。現在ALK阻害薬であるクリゾチニブの治療を行い、in vivoにおけるクリゾチニブ耐性細胞株の樹立を目指している。 日本を含む東アジアにはEGFR遺伝子変異により発生する肺がんが欧米より多い)。このEGFR変異のある肺がんは分子標的薬であるタルセバやイレッサが劇的に効く。しかし、東アジア人特有の遺伝子多型(BIM遺伝子多型とよばれ、東アジア人の12~13%にみられる)によりEGFR-TKIが効かない患者がEGFR変異肺がんの10%あまりに存在し、これまで有効な治療法がなかった。われわれは、リンパ腫に対し日本でも認可されているピストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬ボリノスタットをEGFR-TKIと併用することにより、BIM遺伝子多型によるEGFR-TKI耐性を解除できることを動物実験レベルで明らかにした。 BIM遺伝子多型を有するEGFR変異肺がん患者は日本を含む東アジア人特有の患者群で、わが国で現在年間2500人が死亡していると推定される。この患者群は、EGFR変異とBIM遺伝子多型の測定により簡便に選び出すことができ、ボリノスタットとEGFR-TKIの併用療法により治療成績が画期的に改善される可能性が高い。平成25年度の厚生労働省科学研究費に採択されたため、臨床試験の開始を目指し準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨転移を含む多臓器転移を形成する肺がんを発光で検出できるイメージングモデルを確立し、0阻害薬耐性の系の立ち上げにも成功し、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
骨転移を含む多臓器転移を形成する肺がんを発光で検出できるイメージングモデルを用い種々の分子標的薬の治療効果を検討する。また、ALK阻害薬耐性の系を用いて新たなALK阻害薬耐性の分子機構を明らかにしそれに対する治療法を確立する。
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