ヒト小細胞肺がんSBC-5にluciferase遺伝子を導入し(SBC-5/Eluc)骨転移を含む多臓器転移を発光で検出し定量できるイメージングモデルを確立した。本イメージングモデルを用いて、PI3K/mTOR阻害薬やHsp90阻害薬がSBC-5の肝転移を抑制することを明らかにした。 SCIDマウスに胸腔内移植することで肺腫瘍とがん性胸水を形成するヒトEML4-ALK細胞株(A925LPE3)を樹立した。さらに、この高胸水産生性株にluciferase遺伝子を導入し(A925LPE3/Eluc)、がん性胸水、骨病変(骨転移)、脳病変(脳転移)を発光で検出し定量できるイメージングモデルを確立した。ALK阻害薬であるクリゾチニブやアレクチニブはともにA925LPE3/Elucに対し、in vitroにおいて高い増殖抑制活性を示し、がん性胸水や骨転移形成を著明に抑制した。しかし、脳転移においてはALK阻害薬の抗腫瘍効果に差がみられ、アレクチニブがクリゾチニブよりも明らかに脳転移形成を抑制した。臨床的にも脳転移に対してはアレクチニブがより有効であることから、本イメージングモデルはEML4-ALK肺がん患者のALK阻害薬感受性を反映していると考えられる。 分子標的薬耐性時にはがん性髄膜炎がしばしば発症し患者の生活の質(QOL)低下の原因となる。がん性髄膜炎は、通常の放射線治療や化学療法が奏効しないため、新たな治療法の開発が望まれている。本研究においては、EGFR変異肺がん細胞株にルシフェラーゼを導入し、SCIDマウスの髄腔内に移植し、がん性髄膜炎の進展を発光で定量できるイメージングモデルも確立した。このがん性髄膜炎モデルにおいて、EGFR阻害薬が一旦奏効するが必ず耐性化により再発をきたすこと、耐性化した場合でもより活性の高い次世代EGFR阻害薬が有効であることを見出した。
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