研究課題/領域番号 |
24390282
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
三辺 義雄 金沢大学, 医学系, 教授 (60181947)
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研究分担者 |
菊知 充 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (00377384)
尾内 康臣 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 教授 (40436978)
棟居 俊夫 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (50293353)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / PET / MEG / オキシトシン / 脳画像研究 / セロトニン系システム |
研究概要 |
1、16歳以上の知的障害のない男性アスペルガー障害患者に対するオキシトシンの経鼻長期投与の効果判定を医師主導の非盲検臨床薬理試験として進めるための倫理委員会を通過し、薬物の準備、脳磁図計(MEG)およびPositron Emission Tomography(PET)の準備を完了した。プラセボコントロール二重盲検臨床薬理試験による検査については、検査回数が増大することから、研究費用の面より困難があるため、実現可能な、非盲検で検実薬投与前後の脳内の生理学的変化の評価を行う内容で、倫理委員会の承認を得た。我々は、オキシトシンの作用メカニズムに焦点を当てて研究デザインを組みなおしている。 2、オキシトシンの経鼻長期投与が患者に引き起こす心理行動学的変化を明らかにするための、心理課題の策定を進めた。これまでに、健常人でオキシトシンの効果の評価として開発した表情認知課題に加えて、モラルに関係する脳の機能について測定するための課題を策定した。 3、オキシトシンの経鼻長期投与が患者に引き起こす大脳生理学的変化を明らかにするための、MEGおよびPETの研究を既に開始している。PETにおいては、オキシトシン投与前後の、脳機能評価を、自閉症スペクトラム障害患者3名で既に完了している。セロトニン系の評価を行うための、トレーサーは[11C]DASB (N,N-[11C]Dimethyl-2-(2-amino-4-cyanophenylthio)benzylamine)を用いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倫理委員会通過に時間がかかり、正式な臨床研究開始の遅れから被験者の募集開始が遅れ、目標の人数の研究は達成できていない。しかしながら、H26年度に研究が完遂できることを考慮した。臨床薬理試験のデザインを完遂可能なものに再編し、MEGやPETをもちいた研究のための予備実験等はすでに完了し、既に自閉症スペクトラム障害と診断された患者で、男性患者、知能指数が85以上の患者という基準を満たした3名に対して、朝夜に左の鼻腔に1プッシュ,右の鼻腔に2プッシュ、1日合計24国際単位を経鼻投与を10週間行い、投与前後における下記の評価を終えている。MEG、PETなどによる脳画像検査、および有害事象調査、Autism Diagnostic Observation Schedule (ADOS)をもちいたライセンス保持者による臨床症状評価、「WHO-QOL」はWHOが開発した‘生活の質’を測る調査、Self-rating Depression Scale をもちいたうつ性を評価する自己評価、State-Trait Anxiety Inventoryをもちいた不安症状を評価する自己評価、 Repetitive Behavior Scale- Revised (反復的行動尺度修正版)であり、ASDの症状の一つである反復的行動に焦点をあてた症状の評価に変化がないかを調べている。さらに、オキシトシンに関連する遺伝子多型や、血中のオキシトシン濃度、およびセロトニン濃度が影響を与えていないかを調べるために、採血サンプルを保管している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、オキシトシン投与前後のセロトニントランスポーターの変化の測定およびMEGによる脳機能活動の変化を9人追加して累積で計12回の測定を予定している。最終的には、PETに示されるセロトニン・トランスポーター密度の変化や、脳磁計(MEG)で示される社会的刺激への脳の反応や、自発および誘発的脳機能ネットワークを脳の状態変化として経時的に調べ、オキシトシン治療による脳内のセロトニン系や、機能的ネットワークの状態変化の客観的指標を得る。そのことで、オキシトシンの効果的な個体の特徴や、作用機序解明の一助とする。さらにオキシトシン関連の遺伝子多型や、血中のセロトニンおよびオキシトシン関連遺伝子が、脳内でオキシトシンが引き起こすセロトニン系の影響にどのように関与しているかを調べる事で、オキシトシンの反応性についての指標を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に測定する予定の被験者数が、研究がやや遅れたことから3名と少なくなり、謝金、出張旅費を中心に当初の計画よりも余る結果となった。 H26年度は、H25年度で少なくなった被験者分をさらに拡大して研究する必要があり、それにかかる、謝金、出張旅費に充てる必要がある。
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