研究概要 |
本課題の研究目的はアスタチン-211(At-211)を主としたα線利用がん内用療法の生物学的基盤を確立することである。その目的達成のため、研究初年度の平成24年度は、At-211の効率的で安全な製造システムの構築とAt-211をがん細胞の細胞核に効率よく送達するための抗体作製を計画し、研究を行った。 前者について、具体的には、1.ホットラボ環境の整備,2.効率的なAt-211製造に向けた照射法の確立,並びに3.At-211の精製並びに遠隔自動化を目標に定め研究開発を行った。1について,既設ホットセルを改修し,非密封のαハロゲン核種を取扱えるようにした。また,照射室内の照射装置及び回収装置についても気密化を行い,汚染対策を講じたAt-211製造環境を整えた。2に関し,熱に対して敏感なBiの融解を許容する標的容器を開発し,当該容器を容易に照射可能な垂直照射法と組み合わせることで解決を図った。半密封の標的容器内部にBiを並べ,放医研大型サイクロトロンAVF-930で加速した33MeVのα粒子(標的上で27MeV)を最大12μAで照射した。その結果,約18.5MBq/μAhの収率でAt-211が得られた。3については,放射性ハロゲンの回収で一般的な乾留法を採用し,基礎的な条件検討を終えた。今後,機械化並びに自動化について最適化を図り、遠隔自動化を実現していく予定である。 後者については、がん細胞に特異的に結合する抗体Trastuzumab(Her)にSV40由来の核移行シグナルを含むペプチド(CGYGPKKKRKVGG)を付加した抗体Her-NLSを作製した。ヨウ素-125(I-125)でRIの核移行を評価したところ、Her-NLSはHerに比べて核へのI-125送達が増加していることが判明し、この核移行抗体の有効性を確認した。
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