研究課題
種々の膜型蛋白質は細胞膜上に発現したのち,蛋白質分解作用を受け,可溶型蛋白質として放出されることが知られている.この現象はectodomain sheddingと呼ばれ,様々な生命現象に深くかかわっていることが解明されつつある.本研究プロジェクトではectodomain sheddingの中心的な役割を担うADAM10およびADAM17遺伝子を中心に運動器・造血器などにおける機能解明を目標としている.またこれに併せ,膜型蛋白質を含めた分泌蛋白質全般の品質管理と細胞内恒常性維持に必須の機構である小胞体ストレス応答機構の運動器における機能解明に関わる研究を行っている.25年度は主に以下の研究成果を得た.1.ADAM10は細胞の分化決定,増殖,未分化能維持に関わるとされるNotchシグナルを制御することが,われわれを含めた研究グループから解明されつつあるが,今回われわれは,筋衛星細胞特異的に欠損させた遺伝子改変マウスを作成し,本遺伝子改変マウスでは筋損傷後の回復が著しく阻害されることを見出した.これはADAM10-Notchシグナリングが筋衛星細胞の機能調節に関わっていることを示唆する所見であり,また,in vitroからの実験からもADAM10による筋衛星細胞の未分化能維持に関与するデーターを得ている.次年度に引き続き詳細なメカニズムの検討を行う予定である.2.小胞体ストレス応答は上述のように分泌蛋白質の品質管理に関わる機構であるが,破骨細胞分化過程において小胞体ストレス応答が惹起され,その小胞体ストレス応答にて活性化される分子が破骨細胞分化を正に制御しうることを見出した.本研究結果に関しては現在論文を投稿中である.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,ADAM10およびADAM17遺伝子を臓器特異的に不活化した遺伝子改変マウスを複数以上さ作成し,そのいくつかにおいて興味深い表現型を観察している.それらの幾つかは前年度にすでに論文として発表済みであるが,次年度以降も複数の論文発表が期待される.また,本研究プロジェクトのメインテーマである分泌蛋白質の機能調節を角度を変え検討するために,小胞体ストレス応答機構に関する研究をectodomain sheddingと併せて行っているが,本プロジェクトにおいても興味深い知見が得られており,本研究プロジェクト期間中に複数の論文の発表が予想される.造血調節に関しては現在GCSFの産生メカニズム解明を目的とした遺伝子改変マウスを作成中であり次年度から解析に着手の予定である.
運動器全般におけるectodomain sheddingの機能を解明するため,引き続きモデルマウスの作成とその解析を行う予定である.次年度はADAM10遺伝子の軟骨分化ならびに筋衛星細胞における機能解析を特に主眼としている.造血制御に関しては,新規のモデルマウスを利用しG-CSFの産生細胞の同定を目標としている.
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