目的:助産師基礎教育は多様化しているものの、基礎教育として育てる能力と、卒業後に臨床の場で修得していく能力を踏まえた教育をしていく必要がある。助産師が自律的に活動している欧州連合における助産師基礎教育の分娩介助件数は40例と規定されており、本邦の10例を大きく上回る。そこで、卒業後の分娩介助件数40例までの変化を継続的に調査し、産婦ケア能力獲得のための示唆を得ること。 方法:平成24年度、25年度に全国の分娩施設の看護管理者に研究趣旨を依頼し、同意の得られた233施設に勤務する卒後1,2年目の助産師1,150名を対象に分娩介助40例までの10例毎の分娩進行判断能力を、IT(マナバフォリオ)を用いて前向き縦断的にデータを蓄積した。 調査内容は、【分娩介助に必要な実践】は、「分娩進行状態の判断」「分娩進行に影響する要因」「胎児の健康状態」「分娩準備」「児娩出手技」「胎盤娩出手技」「分娩直後の母児の状態」「分娩後の異常の有無と帰室」「新生児の状態」の9領域を判断・予測・援助の3側面で評価。【助産ケア実践に関する態度】は、「助産計画」「安楽/心地よさ」「産婦・家族との関係性」「倫理観」「責務」「母子関係形成支援」「スタッフとの連携」「意思決定支援」である。回答は5件法とした。分析は、Kraskal-Wallis検定と一元配置分散分析(DunnettのT3)により4群間の比較をした。 結果:回収は229名で、回収率19.9%であった。分娩期の臨床判断と実践は、例数を重ねるごとに得点の上昇、分散の減少傾向を認めた。一方、分娩進行に影響する要因や胎児の健康状態は、分娩進行に伴い変化する状態に関する査定であり、分娩件数を要する傾向にあり、予測を含めた臨床判断能力の獲得には、30例を要する結果となった。また、児娩出手技については40例でもできるという実感は持ちにくいことが明らかとなった。
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