研究概要 |
本年度は,ピナツボ火山,タール火山およびサンパブロ火山群において,フィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)と共同で現地調査を実施した.まず,ピナツボ火山については,平成24年9月に山体周辺の調査を実施し,水分析や熱ルミネッセンス年代測定用の試料も採取した.現在,分析およびその結果解析を進めているところである.また,同時にピナツボ火山の山体だけでなく北北東約80kmに位置するパイタン湖で本格的な掘削をするための予備調査を実施した.ハンドオーガーによって深度3mまでのコア試料を採取し,花粉分析や炭素14年代測定を行い,予察的な報告を論文として公表している(Fujiki et al., 2013).この結果をふまえて,平成25年度に本格的な機械ボーリングを実施することにしている.また,ピナツボ火山についても山麓を中心に調査を継続させる予定である.さらに,平成24年12月および平成25年2月には,タール火山の東約30kmに位置するサンパブロ火山群でも機械ボーリングを実施する予定であり,タール火山から噴出したテフラもこの地点で多く捉えることができ,サンパブロ火山群のみならず,タール火山の噴火史をより詳細に解明できると期待している. 平成24年11月には,PHIVOLCSからDaag氏とBariso氏を招聘し,福岡大で田口氏との水分析に関する討論,鹿児島大で小林氏とイロシンカルデラに関する地質学的な議論を行い,国分平野で実施されているボーリング掘削現場も視察した.この視察は,日本でのボーリング技術をフィリピンの研究者に直接みせて,我々の意図するところ理解してもらうことを目的とした.以上のように,平成24年度は,次年度以降の機械ボーリングを掘削することを念頭に,ロジスティックスも含めた基本的な情報収集を進め,その一部については予察的な論文を公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では,ピナツボ,タール,イロシンの3火山から噴出したテフラをキーとして,ルソン島のテフロクロノロジーを確立することを目指しており,ボーリング掘削により得たコア試料が基礎となる,初年度において,ピナツボとタールに近接した地点での候補地を選定し,ロジスティックスの準備も整えた.当初の計画では1年に1ヶ所ずつであったが,平成25年度にまとめて掘削することとした.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の約265万円は,当初の計画で平成24年にもボーリング掘削をする予定であったが,受け入れ先のPHIVOLCSの事情もあり,平成25年度にまとめて2ヶ所掘削することにしており,その経費に使用する予定である(旅費およびその他).
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