研究課題
この研究では,フィリピン,ルソン島における最近5万年間のテフラ層序(特にイロシンカルデラ,タール火山,ピナツボ火山)を明らかにすべく,ボーリング掘削を行うことにしている.その候補地選定のため,ピナツボ火山に近いパイタン湖(タフリング),タール火山に隣接するサン・パブロのセブン・レーク(マール),イリガ火山のブヒ湖(岩屑なだれによるせき止め湖)などで音波調査を実施し,湖底の形状を明らかにした.次年度では,これらの湖底堆積物のピストンコアによる採取,湖畔などで機械ボーリングにより良質な試料を得てテフラの検出を進めることにしている.ピナツボ火山では,山頂地域の地質調査を実施し,古カルデラ湖の存在を示す湖成層を確認した.放射性炭素年代測定用の試料(木片)も採取し,年代測定を進めている.今後,山頂域を構成する溶岩の熱ルミネッセンス年代と合わせて,同火山の噴火史の詳細を明らかにする予定である.小特集「フィリピン・ルソン島のイロシンカルデラとブルサン火山の地質と最近の噴火活動(その1)」を「地学雑誌」に出版した.そのなかで,イロシンカルデラを形成した大規模火砕流の噴火推移を報告している(Kobayashi et al., 2014).また,檀原ほか(2014)は,その一部にカミングトトン閃石が含まれるなど岩石記載的特徴を詳しく報告しており,これらの知見が今後の広域対比に役立つものと期待している.
3: やや遅れている
年度内に湖底堆積物をコア試料として採取する予定であったが,送付した機材がマニラ港での通関に時間がかかったために,試料採取が実施できなかった.既に通関は完了しており,次年度にコア採取を実施することにしている.また,良好な試料を採取するためのボーリング業者の選定も難航しているが,次年度は実施できるようにしたい.
陸上での機械ボーリングと湖沼でのピストンコアリングを早急に行い,コア試料から広域テフラを発見するように務めたい.これまでの調査によって,試料採取に最適な地点は判明しており,あとはコア採取を実施するのみである.また,ピナツボ火山の山頂部の地質調査もこの2年間に重ねており,今年度の調査で最終的な取りまとめを行いたい.
平成25年度に機械ボーリングを実施する予定であったが,候補地点ならびに実施業者の選定に手間取り,実施することができなかった.フィリピンでは,日本国内のように未撹乱の綺麗なコアを採取することが難しく,できるだけ経費をかけずに日本のボーリング技術を導入することに時間がかかった.最終年度である平成26年度の早い段階で,ボーリングを行うべく業者の選定を進めており,実施できる見込みである.コアの採取後は,速やかにテフラなどの分析にかかり,年代測定と合わせて広域編年の年代学的枠組みを構築する見込みである.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.acrifis-ehai.fukuoka-u.ac.jp/EHI/