研究概要 |
会社更生手続における担保権の処遇については,従来,別除権構成は採用されず,一連の会社更生法の改正においても,なお更生担保権構成は維持された。担保目的物の評価基準については,継続企業価値を採用することの問題性が認識された結果,現行法においては,いわゆる時価評価が採用された。こうした時価基準の採用については,立法に関与した有力な研究者から,実際的理由に基づく一種の妥協案とも評され,理論的になお考究すべきことが問題点として指摘されていた。また,我が国の実務上,いわゆる「処分連動方式」が堅持され,時価評価基準との連関に疑問がないではない。本研究においては,再建型倒産手続における担保権の評価基準を処分価値とする可能性を検討するため,その前提として,倒産手続における担保目的物の評価につき,諸外国の法制度の枠組み,および実務上の取り組みについて,調査分析することを目的とする。平成24年度においては,倒産実務家の主催する研究会に継続的に参加しつつ,処分価額連動方式についての研究報告やそれを実践してきた倒産実務家から基本的な情報を取得し,意見交換を行った。また,下村信江教授(フランス担当)は,現地に赴き,パリ第2大学法学部のピェール・クロック教授と面談し,研究調査の協力を得つつ,平成25年度における日本での研究会報告について調整を行っている。金春准教授(韓国担当)と藤本利一(研究代表)は,東アジア倒産実務研究会(於:梨花女子大学(韓国,ソウル))に参加し,また,中央大学法学部の田教授に韓国の倒産法の現状についてインタビューを行った。藤本利一は,ハーバード大学のJesseFried教授と定期的にコンタクトをとり,アメリカの状況を確認している。また,平成25年度ないし26年度における,Fried教授による本研究会での報告について,暫定的な同意を得た。
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今後の研究の推進方策 |
日本における処分連動方式について,倒産実務家の協力を得ながら調査を進める。フランスから,パリ第2大学法学部のピェール・クロック教授,アメリカから,ハーバード大学のJesse Fried教授を招聘し,研究会を行う。中国北京で開かれる東アジア倒産実務研究会に参加し,韓国,また中国の情報を得る。以上を本年度の柱とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の調査研究をもとにして,平成25年度ないし平成26年度に,海外の有力な研究者を招聘して研究会を実施するため,資金を留保する必要があった。海外調査,実務家等への協力謝金,データの整理,出張手続等に関する事務補助のための経費も必要となる。
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