研究課題/領域番号 |
24500157
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
井上 哲理 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (30223259)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 立体映像 / 立体視 / 周辺視野 / 没入型ディスプレイ |
研究概要 |
本研究は,没入型映像表示システムで提示される二眼式立体映像に対する観察者の立体視特性を実験的に調査して,立体視における周辺映像や背景映像の役割を明確にして,実用に役立てることが目的である.研究において,没入型映像表示システムとして既存設備である箱型4面立体スクリーンシステム(通称CAVE型ディスプレイ)を用いた. 当該年度は,映像から受ける立体感が,(1)視野サイズや(2)画枠により,どのように影響を受けるかを調べる主観評価実験を中心に研究を実施した.まず実験に用いるための,これら条件パラメータを変化できる映像コンテンツを作成した.映像としては正方形,円形などの2次元図形や立方体,球などの3次元モデルを視野内の任意の位置に,任意の奥行きで提示できるものである.また,任意の大きさの四角枠の画像(画枠)を重畳提示可能なものである. 実験結果としては,映像が提示される視野を広くしていくと立体感が得られる奥行き範囲が広がること,ただし立体感の大きさはやや減少傾向を示すことが示唆された.また,立体視への画枠の影響は大きいことがわかり,画枠が大きいと立体感が得られる奥行き範囲が広がった.現段階では周辺視野と立体視の関係の定性的な関係の一部が分かってきた段階であり,映像の立体視に影響する周辺視野範囲や枠の影響を明確にするためには定量的な検討が今後必要である. なお,研究実施計画では,(3) 周辺視野映像の図柄が立体感に及ぼす効果・影響についても実験を行う予定であった.予備実験を複数実施したが,明確な傾向が現段階では得られていない.原因として,図柄モデルの奥行き位置や奥行き形状なども関係していることが示唆され,今後さらに検討することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,初年度に今後の実験に用いる,(a)映像コンテンツ(没入型映像表示システム表示用)の基本部分の作成と(b)立体像の知覚位置を調べるための3次元位置センサ(購入装置)の整備を予定していた.(a)については制作を行い,テストを経て実験に用いている.(b)についてはデータ取得プログラムを準備したが,十分なテストには至っていない.この点で実験準備部分の遅れがややでている.また,立体視実験として,(1)視野サイズと立体感,(2)立体感への画枠の効果・影響,(3)周辺視野映像の図柄と立体感,の3種類の実験を実施する計画であった.実験としては3種類とも実施をしたが,(1),(2)については次年度以降につながる結果を得られたが,(3)については明確な結果が得られなかった.また,いずれも実験での被験者数が不十分であった.これまでのところ,おおよそ計画通りに進めているが,一部では遅れや当初計画通りに進んでいない部分もあり,全体として計画はやや遅れていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果をふまえて,周辺視野に関する追加実験を行い,定性的,定量的な検討を加えていく.特に定量的な検討には,時間のかかる実験も必要となるが,実験補助者を増やすなどで進めていく予定である.また,被験者の視点位置の効果といった位置計測を用いる新たな実験も開始するが,購入装置である3次元位置計測装置を有効に用いて進める. なお,本研究で得られる知見は立体感の有無や大きさなどの主観評価に基づくものが多い.これらからは,各種条件と立体感との関係は分かってくるが,その原因などを推測するためには映像鑑賞時の視線位置や焦点調節位置などの計測も必要となるであろう.そのため,これらの計測を実施している研究者の協力も検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度当初計画していた実験のうち一部については,予備実験の段階で予想していた結果が得られず更に検討が必要であることがわかった.そのため,当初予定していた被験者実験を実施せず,次年度に必要な検討を行ったのちに実施することとした.そのため,これに関わる人件費(実験補助,データ解析補助アルバイト)を使用しなかったが,これらは次年度に同じ用途で使用する予定である.また,国内研究発表用に予定していた旅費も,発表を次年度に行うこととしたため,次年度に利用予定である.なお,当初の計画の次年度以降研究費は,計画にそって次年度以降に使用する予定である.
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