研究課題/領域番号 |
24500157
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
井上 哲理 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (30223259)
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キーワード | 立体映像 / 立体視 / 周辺視野 / 没入型ディスプレイ |
研究概要 |
本研究は,没入型映像表示システム(CAVE型ディスプレイ)で提示された二眼式立体映像に対する観察者の立体視特性を実験的に調査して,立体映像表現の実用に役立てることを目的としている.前年度は,主に視野サイズの影響について調べた. 当該年度は,ディスプレイの種類での比較を中心に研究を進めた.具体的には,(1) CAVE型ディスプレイでの立体映像の位置,大きさ知覚および疲労感について調べる実験を行い,従来のディスプレイに対する研究結果と比較した.また,(2)ビル高所から眼下を望む立体映像を用いて,高さ方向の立体知覚についてCAVE型ディスプレイとHMD型ディスプレイとで比較を行った. 実験結果として,(1)CAVE型ディスプレイではスクリーンから大きく飛び出すような映像でも立体視が可能であり,また立体像(CGモデル)の立体位置やサイズに関しては被験者の手の届くような範囲の映像呈示で正確度が高まることがわかった.一方,疲労感については従来型ディスプレイと比較した場合の明確な差は見られなかった.没入型映像表示システムでは比較的大きな視差を持った立体映像呈示が可能なことがわかったが,その理由の解明にはいたらなかった. (2)高さ方向の立体感については,CAVE型の方がHMD型よりも高さ知覚の正確度が高い傾向にあることがわかった.原因としては,周辺映像の影響が示唆された. 実験内容(1),(2)ともに知見は得られたが,原因や要因に関する考察は十分とはいえず,さらなる検討が必要である.なお,前年度からの課題である(3)周辺視野映像の図柄が立体感に及ぼす効果・影響について予備実験を実施したが,明確な傾向が現段階では得られておらず,今後さらに検討することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,平成25年度以降は,主に描画視点と観察視点のズレと立体視との関係を解明する実験を行う計画であった.そこで平成25年度は,実験用CAVE型ディスプレイにおいて,描画視点と観察視点の同期をとるヘッドトラッキング機能を整備した.また,比較実験用としてのHMD用実験映像を制作した.これらを用いて,立体映像のサイズ感,距離感に関する実験を実施できた.この面での研究はほぼ予定通りに進捗していると考えている.引き続き平成26年度は,描画視点と観察視点のズレと立体視との関係を調べる実験を行う計画である. 一方,当初の計画では,周辺視野映像の図柄や背景映像の影響に関する実験を平成24年度に実施予定であったが予備実験の段階で明確な傾向が見られず本実験に至らなかった.平成25年度に引き続き検討を行い,背景映像の影響についてはある程度の方向性は見えてきたが周辺視野映像の図柄に関しては引き続き検討が必要となった.これまでのところ,おおよそ計画通りに進めているが,一部では遅れや当初計画通りに進んでいない部分もあり,全体として計画はやや遅れ気味と考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果をふまえて,周辺視野の図形や背景映像に関する予備実験を繰り返して,定性的,定量的な検討が可能な本実験を行う.このために実験補助者を増やすなどで進めていく予定である.平成26年度は,主に描画視点と観察視点のズレと立体視との関係を解明する実験を行う計画であるが,平成24年度に購入・整備した3次元位置計測装置を有効に用いて進める.また,近年新たに登場した高精細ディスプレイや広視野HMDなども適宜購入して,それらを用いた実験を行い,実用面から検討を行う. 本研究では立体感や疲労感などの主観評価に基づく評価実験が多くなる.別な観点での評価も行う必要があり,これらの計測を実施している研究者の協力も予定している. また,研究の推進にあたり,実験結果などは部分的な知見であっても積極的に国内研究会等で公表して,同分野の研究者からのアドバイスをあおぐことも必要と考えており,今後はこの面でも研究推進をはかる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では平成25年度に海外での学会発表にて旅費を使用予定であったが,現在の研究成果が不十分と判断して平成26年度に投稿,発表することとした.また,平成25年度の国内発表,海外発表については,他研究者との共同研究も含んだ内容となっており,旅費について別の経費で支出するのが適当と判断して,本補助金からは支出しなかった.また,実験で使用するディスプレイ装置の購入を予定していたが,予定製品の品薄等の影響で当該年度での購入は見送り,次年度に購入することとした. 物品費に関しては,広視野HMD型ディスプレイや高精細ディスプレイなどを購入予定で,これらには平成25年度に購入予定で延期していたものも含む.旅費については,平成26年度は,本研究課題を中心として発表を増やすことで当初計画の旅費を使用する計画である.なお,人件費については,研究推進の観点で実験補助者の実働時間を当初計画よりも増やす予定であり,当初計画の予算で足りない場合は,物品費や旅費等の一部を充てることも検討したい.
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