研究課題
脳のγセクレターゼ活性の領域特異性と発達に伴う活性の変化について調べた。昨年度の研究で脳γセクレターゼ活性の測定方法の検討を行い、ラフト画分を用いてin vitro Aβ産生法により活性測定を行うことにしたが、その後、ミクロソーム画分由来のCHAPSO可溶性画分を酵素源とする方が本研究の目的に適合するらしいということが分かった。そこで、ここではCHAPSO可溶性画分を用いたin vitro Aβ産生法により脳γセクレターゼ活性の解析を行った。2ヶ月齢マウスの脳を、大脳皮質、海馬、間脳、脳幹、小脳に分け、各領域のγセクレターゼ活性を測定し比較検討した。脳のγセクレターゼ活性は大脳皮質で高い傾向を示したが、領域間における活性の差違は小さく有意差はなかった。次に、胎生期から6ヶ月齢までの種々の発達段階のマウスの大脳皮質のγセクレターゼ活性を測定した。その結果、胎生期の脳は非常に高いγセクレターゼ活性を呈し、生後徐々に活性が低下して、4週齢以降には低レベルでほぼ定常状態になることが分かった。各発達段階におけるγセクレターゼ複合体構成因子の発現量は活性変化のパターンとよく一致しており、γセクレターゼの量的変化が活性量を制御している可能性が示唆された。また、産生されるAβの分子種を調べると、Aβ40とAβ42/Aβ43の割合に年齢依存的な変化が見られた。以上のことから、γセクレターゼは胎児型酵素であり、胎児期のAβ産生に生理学的な重要性がある可能性が考えられる。また、年齢依存的に生じる活性の低下と修飾についてさらに十分な検討を行い、アルツハイマー病発症との関係を明らかにすることが重要である。
2: おおむね順調に進展している
さらに詳細な研究を行うべき点もあるが、現在のところ、おおむね計画通りに研究が進行している。
今後、加齢が進行したマウス脳を用いて、老化に伴うγセクレターゼ活性の量的・質的変化を追跡する。また、アルツハイマー病患者脳と正常脳を用いてγセクレターゼ活性を測定し、疾患に特徴的な活性の変化を明らかにする。
次年度使用額が生じた理由は、これが平成26年3月31日の支出状況(3月31日に支払い終了のもの)を反映しているためであり、研究費はほぼ全額を本年度中(3月中)に使用している。上記の理由により次年度使用額は実際にはほとんど存在しない。在った場合には、実験のための消耗品の購入に充てる。
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