研究課題/領域番号 |
24500647
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中道 敦子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (20567341)
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研究分担者 |
松山 美和 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30253462)
石井 まこと 大分大学, 経済学部, 教授 (60280666)
千綿 かおる 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (60442191)
星野 由美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (60457314)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食事介助技術 |
研究概要 |
本学職員10名に予備調査を行った後、2012年2月から5月に徳島県内の特別養護老人ホーム2施設に許可を得て、日常業務で食事介助を行う職員56名を対象に調査を行った。調査の内容は、質問紙調査(フェイスシート、肥満症患者用食行動質問票)と食品を用いた食事介助時一口量・ペースの測定であった。調査の方法は研究実施計画書のごとく、あらかじめ食事介助を行う要介護者として片麻痺者の会話のビデオを3分間視聴させ、次に、食事介助用として販売されている5種類のスプーンからビデオの片麻痺者に適切と思われる物を1つだけ選択させた。このスプーンを使用させて、自分で食べる場合(自己摂取時)と食べさせる場合(食事介助時)の2つの条件で資料食品を10口分(10回)自由にすくい取らせ、重量とペース(時間)を測定した。資料食品は米飯、粥、ゼリーの3つであった。選択対象スプーンは、やさしいスプーン大および小(リッチェル社製)、フィーディングスプーン深型、浅型とK+スプーン(ウィルアシスト社製)の5種類であった。調査の結果は、61%の対象者がボール部分の大きさや安全性の点からやさしいスプーン小を選択した。3食品とも自己摂取時の一口量が食事介助時より多く、食べるペースは速い結果であった(Wilcoxon検定、p<0.05)。一口量の自己摂取時と食事介助時には優位な相関があり、米、粥、ゼリーの順に相関係数が、0.616、0.620、0.669であった(Spearman検定、p<0.05)。同様に食べるペースの相関係数は、0.718、0.652、0.623で優位な相関があった。このことから、食事介助用のスプーンを使用しても介助者個々の日常習慣化した一口量や食べるペースが食事介助技術に影響していることが判明した。その他に本学学生16名を対象とした食塊物性測定を行った。福祉・介護職員への食行動質問票調査は実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画書に沿って以下に理由を述べる 1.予備調査は本学職員10名を対象に実施し、調査時間に1時間程度要することや調査環境の条件が明確になった。これをもとに、研究補助者を含め複数名で特別養護老人ホームに出向き4ヶ月間で56名に調査を実施した。この調査から食事介助用のスプーンを用いて同じ要介護者に食べさせる場合でも、一口量や食べる早さといった介助者個々の日常習慣化した食行動が強く影響していることが判明し、本研究におけるヒューマンファクターの中核をなす結果が得られた。これは平成25年度計画の一部まで進捗し研究目的を大幅に達成したものである。本研究により解明するヒューマンファクターとしての食行動は、この食品と食具を使用した調査と質問票の二つの方法を用いた。肥満症患者の食行動を修正する目的で作成された質問票の結果は本研究対象個別に7つのカテゴリーをもとに解釈し修正すべき傾向として報告した。しかし、正常者との傾向の比較など詳細な分析はまだ行っていない。 2.学生調査は、九州歯科大学のカリキュラムや倫理規定などにより実施困難とされ平成24年度は断念した。いっぽう本学学生については、食行動を多角的に分析するため調査内容をを変更し、2012年9月から12月に一口量や咀嚼回数、嚥下直前の食塊物性の測定を行った。この調査データはまだ整理・分析には至っていないが、ヒューマンファクターとして食事介助者個々に「のぞましい食行動」を伝えるエビデンスとなるものであり意義が大きい。 3.2013年2月から現在進行中で、徳島県内の福祉・介護職員の食行動の傾向について比較的大規模な質問票調査を追加実施している。 以上の実施状況から申請時当初の研究計画はおおむね達成した。さらに科学的・社会的な成果にむけ調査内容に若干修正を加えて実施しておりおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画内容の修正点は以下である 1.学生対象の調査を個別の一口量、咀嚼回数、嚥下直前の食塊物性測定に変更して実施した。2.特別養護老人ホームの介護職員(56名)に加えて、徳島県内の介護支援専門員や老人保健施設、療養型病床などの職員800名を対象に食行動の質問紙調査を郵送法で実施中である。 この点をふまえて今後の推進方策は 1.徳島大学歯学部口腔保健学科学生16名を対象とした、米、魚肉ソーセージ、ピーナッツの一口量と咀嚼回数を嚥下直前の食塊物性との関連性から分析する。2.福祉・介護職員の食行動の傾向について質問紙調査を実施する。3.ヒューマンファクターとして想定した、介助者の職種、研修の有無、経験、年齢、性などについて、平成24年度実施済みの特別養護老人ホーム職員のフェイスシート情報を分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.調査データの集計・分析 データの種類は①学生16名の資料食品実食による一口量、咀嚼回数、食塊物性データ②徳島県内の福祉・介護職員の食行動質問票データ(配布数800程度)③平成24年度に実施した特別養護老人ホーム職員56名のフェイスシート情報があり、それぞれのデータが特異なため集計・分析作業のための研究補助員を数名予定していおり謝金をに使用する。分析用の統計解析ソフトを購入する。さらに高度な統計解析に関しては研究代表者の専門外であるため外注を予定している。次年度繰越金額は高額が予想される統計解析の外注等に使用する予定である。 2.本研究成果の社会的意義を高めるために分析結果の解釈について研究協力者を含めた検討会を行う。この会議の議開催費用および参加者旅費に使用する。 3.老年歯科医学界などの関連学会で発表する。このための研究責任者・研究協力者の旅費に使用する。
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