研究課題/領域番号 |
24500882
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
大澤 郁朗 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (30343586)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水素分子 / 酸化ストレス / ミトコンドリア / 細胞 / 健康長寿 |
研究概要 |
加齢に伴う疾患の新規治療法として、分子状水素投与の可能性が動物モデルを中心に数多く提示されている。しかし、反応性の高い活性酸素種のみを無毒化するという水素の選択的還元作用のみでは、多様な疾患抑制効果を説明するには不十分であり、その作用機序の分子レベルでの解明が水素の臨床応用を広める為の鍵となる。そこで、24年度は水素の分子レベルでの作用機序を解明することを目的にミトコンドリア活性と酸化ストレス防御機構に及ぼす効果について培養細胞系で解析した。 ヒト神経芽細胞SH-SY5Yを予め1から50%の水素存在下で3から24時間培養すると、過酸化水素による細胞死が抑制された。過酸化水素添加後に水素を投与しても細胞死は抑制されなかった。水素存在下で培養した細胞ではミトコンドリア膜電位と呼吸活性及びATPが増加し、グルタチオンの一過的な減少とスーパーオキシドの増加が認められた。この時、Nrf2の核移行が認められた。そこで、酸化ストレス関連酵素遺伝子の発現を定量的PCR法で確かめたところ、カタラーゼとグルタチオン還元酵素が有意に増加していた。これらの結果は、細胞が水素の前処置により酸化ストレスに対する防御能を獲得している可能性を示している。 水素には、最も毒性の高い活性酸素種であるヒドロキシラジカルを選択的に還元する効果と併せて、前処置による細胞の酸化ストレスに対する適応応答(ホルミシス効果)が存在し、この異なる2つの作用が細胞と生体を酸化ストレス障害から防御しているものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、分子状水素が酸化ストレス防御機構を誘導するメカニズムについての細胞を用いた研究を主体に研究を進めた。具体的には、水素により微量増大した活性酸素種が、酸化ストレス防御機構を誘導するという適応応答の有無を細胞レベルで検証した。さらに水素がミトコンドリア活性に及ぼす影響を解析し、直接作用する分子の探索を行う為の基礎的知見を得た。尚、本年度に予定した4つの検討項目をほぼ完了している。(i)細胞培養法と活性酸素種/ラジカルによる細胞死の測定、(ii)活性酸素種の定量、(iii)酸化ストレス防御機構の定量、(iv)ミトコンドリア活性とエネルギー代謝の測定
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今後の研究の推進方策 |
1.実験動物による水素の適応応答の有無を検討 (i) 正常マウスへの水素水投与:細胞を用いた実験結果を基に酸化ストレス防御関連酵素の発現と活性及びミトコンドリアの機能変化を主要臓器で調べる。投与は、数日間の短期または半年程度の長期を予定。(ii) 疾患モデルマウスへの水素水投与:予備実験でH2の効果が確認されているモデル動物を用いてホルミシス効果の有無を解析する。これにより、H2の疾患抑制におけるホルミシス効果の寄与を明確にする。 細胞レベルでの水素分子作用機序の検討 2.24年度の成果を基に特定分子種の水素による物理化学的変化を解析
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験で水素の機能探索を進める為に必要なマウスの購入、飼育、解析費に用いる。また、細胞レベルでの特定分子種の挙動を解析するための分子マーカーの購入、細胞培養、解析に用いる。さらにNeuro2013や基礎老化学会などの学会参加や、論文投稿料に使用する。
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