研究課題
疾患の新規治療法として、水素分子(H2)投与の可能性が数多く示されてきた。しかし、反応性の高い活性酸素種のみを無毒化するというH2の選択的還元作用のみで多様な疾患抑制効果を説明することは困難であり、その作用機序の解明が H2の臨床応用を広める為の鍵となる。そこで、本研究では H2の分子レベルでの作用機序解明を目的にミトコンドリア活性と酸化ストレス防御機構に及ぼす効果について培養細胞系で解析した。ヒト神経芽細胞SH-SY5Yを予め1から50%のH2存在下で3から24時間培養すると、過酸化水素による細胞死が抑制された。過酸化水素添加後にH2を投与しても細胞死は抑制されなかった。H2存在下で培養した細胞ではミトコンドリア膜電位と呼吸活性及びATPが増加し、グルタチオンの一過的な減少とスーパーオキシドの増加が認められた。この時、Nrf2の核移行が認められた。そこで、酸化ストレス関連酵素遺伝子の発現を定量的PCR法で確かめたところ、カタラーゼとグルタチオン還元酵素が有意に増加していた。これらの結果は、細胞がH2の前処置により酸化ストレスに対する防御能を獲得している可能性を示している。H2には、最も毒性の高い活性酸素種であるヒドロキシラジカルを選択的に還元する効果と併せて、前処置による細胞の酸化ストレスに対する適応応答(ホルミシス効果)が存在し、この異なる2つの作用が細胞と生体を酸化ストレス障害から防御しているものと考えている。こうした知見をもとに水素水による抗がん剤の副作用抑制効果を解析した。マウスへの抗がん剤ゲフィチニブ単独投与で病変は観察されないが、ナフタレンによる肺障害時にゲフィチニブを併用投与すると予後が急激に悪化し、ヒトでの副作用に類似する。このマウスに水素水を飲用させると体重低下や肺病変が顕著に抑制され、早期の臨床応用が期待される結果となった。
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http://www.tmghig.jp/J_TMIG/kenkyu/team/seitaikankyooutou.html