研究課題/領域番号 |
24501311
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鯉沼 代造 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80375071)
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キーワード | lncRNA / lincRNA / FAIRE / RNA-seq / EMT / TGF-beta / 乳がん / オープンクロマチン |
研究概要 |
平成25 年度は乳がん細胞でRNA-seqデータを取得した。FAIRE-seq データの解析結果との比較から、EMT能獲得の前後におけるオープンクロマチン領域の変化領域におけるDNA配列の特徴を網羅的に検討し、近傍の遺伝子の発現と比較することでその意義と重要な制御因子の同定のための解析を行った。その結果EMT に関わるある転写因子の結合配列がEMT能獲得に伴いオープンクロマチン領域に高頻度に認められることを見出した。この転写因子をノックダウンしてもオープンクロマチン領域には変化が認められないことから、この転写因子が機能するためにオープンクロマチン領域の変化が前提として必要であることが示唆された。またEMT能獲得に伴い失われるオープンクロマチン領域に着目してその制御因子の同定解析を開始した。 RNA-seqにより同定した新規TGF-beta標的転写産物の機能についてsiRNAで引き続き検討を行うと共にアデノウイルスベクターによる強制発現による検討をあわせて開始した。その結果この因子の抗アポトーシス作用を見出した。マウス乳がん細胞移植モデルを用いてこの転写産物の機能を評価した結果、この転写産物の発現を抑えることで腫瘍形成能が抑えられることを見出した。以上の結果をまとめて論文投稿を開始した。 EMTにおける主要な転写制御因子の一つZEB1についてChIP-seqによる乳がんでの網羅的結合部位の同定解析を開始した。ヒト乳がん細胞を用いてChIPサンプルを取得、評価したうえで予備的検討を行い、次世代シーケンサーで結合部位の取得が可能であることが強く期待される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は乳がん細胞でのRNA-seqデータの取得を行ったほか、平成24年度に同定したTGF-betaの新規標的転写産物のsiRNAと過剰発現による機能解析から、アポトーシスに対する作用を見出し、さらにマウス移植モデルでの解析から腫瘍形成能への影響を明らかにすることが出来た。これらの結果を論文にまとめ現在投稿中である。 FAIRE-seqについてもEMT前後のオープンクロマチン領域の変化について網羅的な検討を行った結果いくつかの特徴的なモチーフを同定し、そのモチーフに結合する転写因子群の役割について機能解析を開始するなど計画通りに順調に進行している。さらにEMTに重要なZEB1のChIP-seqデータ取得を平成26年度計画を前倒しして開始している。以上のことから当初の計画を大幅に上回る、極めて順調な研究の進展が見られたと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
新規標的転写産物の役割に関する研究結果を論文として公表する。FAIRE-seqやZEB1のChIP-seqについては得られたデータの網羅的解析を行うことにより真に重要な制御因子・制御機構を明らかにすることが出来るように心がける。また次世代シーケンサーによるデータ取得においてはそのデータの質は極めて重要であり、たとえばChIP-seqにおいては統計学的に算出される結合部位が生物学的意味を有するかどうかは用いる抗体・方法に強く依存している。こうした点のvalidationにも意を払うことで得られた結論の妥当性に揺るぎが無いよう配慮する。 また平成25年度に報告された、より詳細なシグナル下流の転写制御機構をあきらかにすることが期待される新規の方法論が注目を集めている。FAIRE-seqでの検討を通して得られたノウハウを利用し、この手法についての予備的検討をあわせて推進して行く。
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