研究課題/領域番号 |
24520006
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
竹内 聖一 立正大学, 文学部, 講師 (00503864)
|
研究分担者 |
吉川 孝 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20453219)
早川 正祐 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (60587765)
池田 喬 明治大学, 文学部, 講師 (70588839)
木村 正人 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (80409599)
古田 徹也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00710394)
|
キーワード | 行為論 / 倫理 / 共同行為 / 責任 / 共感 / 意図 |
研究概要 |
当研究グループでは、共同行為論や語用論における共通知識をめぐる議論の検討を通じて、「共通知識の基礎に、知覚や推論・背景知識の標準的なあり方に関する前理論的な理解の共有がある」という見通しを得た。こうした理解の共有は、我々の間で共通した身体や知覚のあり方に依存し、共同的な社会生活の中で獲得されてくるものであろう。その過程において、共感や感情移入といった感情的・情動的要素が重要な役割を果たしていると考えられる。そして、共感や感情移入を扱うには、おもに行為者の合理性に焦点をあわせてきた従来の行為論の枠組では不十分である。そこで、社会学や倫理学における研究成果の蓄積に依拠して研究を進めることとなった。 中間年度にあたる平成25年度は、まず、分析哲学、現象学、社会学理論等によって従来検討されてきた共同行為論に関する諸論点を確認し、共同行為の構成要件や行為者性、責任の問題といったこれまでの研究課題を引き続き検討するとともに、共感の概念についても現象学の理論の整理やケアの観点からの検討を行った上で、共感論と共同行為論を接続する端緒を探った。 年度中頃には当科研費グループのメンバーが一堂に会し、一般公開の成果報告会を開催した。報告会で検討された原稿をもとに加筆修正を加えてまとめたものを『行為論研究』3号として公刊した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主題である共同行為の成立要件については、2012年に公刊された古田の論文「共同行為の構成条件」を端緒として研究が継続され、今年度、竹内、木村、鈴木、筒井などが論文を公表している(その多くが本研究プロジェクト発行の『行為論研究3号』に掲載された)。また、共感については、今年度池田、八重樫が予備的な研究を行い、やはり論文を公表している(『行為論研究3号』)さらに、共同行為と共感の接点となるケア概念については早川、池田、吉川が研究を進め、その成果は早川の博士論文や池田、吉川の学会発表として公表されている。以上のように、本研究課題を達成する上で必要不可欠な考察がそろいつつある状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
申請時に本研究の課題としたのは以下の3点である。(1)共同行為を分析する上で従来の行為論が抱えている限界を、共感や感情移入の理論によってどのように克服するかを探ること、(2)社会学や現象学の領域において、共感や感情移入がどのように理論化されてきたのかを明らかにすること、(3)これら二つの作業から得られた視点のもとで、共同行為をめぐる問題群について応用倫理学的検討(特に、ビジネス倫理やケア倫理)を行うことで、行為分析における感情論の現代的意義と可能性を検証することである。 現在のところ、1)や2)の課題はおおむね達成されたものと考える。最終年度となる2014年度は、これらの成果をもとにして、3)の課題に取り組む。そこで問題となるのは、従来の行為論(特に分析哲学における行為論)が度外視してきた、身体や感情の問題が、行為の共同性の成立にどのような役割を果たしているのかということである。こうした問題を考察することで、共同行為の主体に対する倫理的な取り扱いが、単独の行為主体に対するそれとはどのように異なるのかを明らかにしたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度に分担者の出張計画を追加し、その費用を捻出する必要が生じた。当初購入予定だったPCを購入しようとしたところ、直前にそのモデルの新製品が発売され、当初見込んでいた額を実際の価格が下回ったので、余剰の金額を次年度の経費に充てることとした。 今年度は研究成果公表の場として、学会でのワークショップを計画している。そのワークショップに出席予定の研究分担者が今年度より三重県立看護大学に赴任している。繰り越された金額はその分担者の旅費として使用する予定である。
|