日本語は思考の論理的表現には適さないとしばしば言われてきた。そうした主張の理由として挙げられてきたものには、(1) 可算/非可算の区別がない、(2)単数/複数の区別がない、(3)確定/不確定をしるしづける明確な指標がない、といったものがある。本研究は、こうした主張が、論理についてのあまりにも狭い見方に依存していることを示す。この見方によれば、基礎的述定は単称的であり、複数や非可算の述定はすべて単称述定に還元されるべきである。複数論理の出現は、こうした見方を過去のものとする。本研究は、複数論理をメタ言語とする日本語意味論の構成により、日本語への上のような見方がまちがいであることを示した。
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