研究課題/領域番号 |
24520035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大石 敏広 沖縄工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (20442494)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 応用倫理学 / 技術者倫理 |
研究概要 |
平成24年度の研究計画は次のとおりであった。①応用倫理学の方法論についてのこれまでの見解がどのようなものであり、それは妥当かどうかについて考察する。②工学の設計問題の解決法と倫理問題の解決法は関連するという議論を検討する。この関連をめぐる議論を検討することによって、何が問題となっているのかを整理し、工学の設計問題の解決法から倫理学一般の問題解決法を学ぶ。 以上の研究計画に基づいて平成24年度の研究は行われた。その研究成果は次のとおりである。①従来の応用倫理学の方法論である「原理主義」、「パティキュラリズム」、「反照的均衡法」などを検討し、その問題点について明らかにした。②工学の設計問題の解決法(「設計的思考」)の本質的な特徴を明らかにした。③現実の社会問題を解決していくために「設計的思考」を利用するうえで、専門家と非専門家の「双方向的コミュニケーション」の必要性を明らかにした。 以上の研究成果を二つの論文にまとめ、また倫理学会のシンポジウム(「専門家と信頼」)において発表することができた。福島原発事故があり、科学技術の問題について考える気運が高まってきた中で、科学技術の問題を解決するための一つの提案ができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画は、①従来の応用倫理学の方法論について考察し、②工学の設計問題の解決法から倫理学の方法論を学ぶ、ということであった。平成24年度の研究はこの研究計画の通りに行われたと言ってよい。ただ、従来の応用倫理学の方法論として「原理主義」、「パティキュラリズム」、「反照的均衡法」などを検討したが、その議論について他の研究者を納得させるためには、さらなる議論が必要であると考えている。この点については次年度以降の課題としておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、次のように研究を進めていく予定である。① 前年度の議論について補強できる点についてさらなる考察をしていく。② 前年度の考察をもとに、環境倫理学で議論されている問題へと移っていく。次の問題を取り上げる。 (a)「自然は本質的価値を持っているか」:人間にとって役に立つ価値は「道具的価値」と呼ばれている。自然には、「道具的価値」とは別に、それ自体の価値としての「本質的価値」があるという考え方が、これまで環境倫理学の分野において支配的であった。もし自然に「本質的価値」といったものがあるとするなら、環境問題を解決する際に、この「本質的価値」という要素は決定的な影響を及ぼすと考えられる。 (b)「一元主義と多元主義の対立について」:「一元主義」とは、ある普遍的な単一の原理・理論によって、道徳的判断・行為の妥当性を説明しようとする立場である。もしこの「一元主義」が正しいならば、環境問題もまた、環境に関する単一の原理や倫理学理論によって解決されることになる。これに対して、「多元主義」は、そのような単一の原理・理論を否定する立場である。本研究では、「一元主義」を批判的に論じていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は研究費を次のように使用していく予定である。 ①設備備品費―15万円(これは、技術者倫理の文献を含め、必要となる文献を購入するために使用される。これにより、十分な文献の設置に努める。) ②国内旅費―90万円(これにより、できるだけ多くの学会・研究会などに出席し、議論に参加し、研究の洗練化に努めたい。) ③謝金―10万円(これにより、執筆した論文の査読を依頼したり、直接会って論文について議論したりする機会を設けたい。) ④その他―5万円(文献複写等のための費用として確保しておきたい。) ⑤コンピュータ購入費―20万円(平成24年度にコンピュータを購入する予定であったが、それまでのものを引き続き使用したので、購入はしなかった。平成25年度には買い替える必要が出てくると考えられる。)
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