研究課題/領域番号 |
24520035
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大石 敏広 北里大学, 一般教育部, 教授 (20442494)
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キーワード | 応用倫理学の方法論 / 設計問題 / 自然の価値 / 多元論 / 一元論 |
研究概要 |
応用倫理学の方法論を明確にするという目的の下に平成25年度の研究計画は次のように設定された。①前年度の研究(工学倫理の設計問題に関する研究)の補完を行う。②自然には道具的価値以外に内在的価値があるかどうかについて考察する。③ある普遍的な単一の原理・理論によって、道徳的判断・行為の妥当性を説明しようとする立場(「一元論」)と、そのような原理・理論を認めない立場(「多元論」)の対立について考察する。 以上のような研究計画の下、平成25年度は次のような研究成果が得られた。①設計問題を解決する際の方法が、倫理問題を解決する際の方法としても役に立つという点を明確にした。そして、両者の共通する要素を析出し、4つの項目にまとめた(制約条件の複雑性とトレード・オフ、制約条件の1つとしての倫理的要素、複数解・解答欠如の容認、行為者の方法論)。この方法論を「設計的思考」と名付けた。②倫理学理論が実際の問題の解決にどのように関わるかについて考察した。それぞれの状況に応じて、それぞれの倫理学理論の役に立つ部分を利用していくという実用主義的な考え方を提示した。②「自然の価値の問題」、「一元論と多元論の対立の問題」について考察した。この二つの問題を解決するためには、メタ倫理学における価値論の問題を検討する必要性が明らかとなり、メタ倫理学の価値論の研究を並行して行った。その成果として論文の作成に着手したが、その完成は次年度に持ちこされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画は、①前年度の研究を補完し、②環境倫理学のテーマである「自然の価値の問題」と「一元論と多元論の対立の問題」について考察するということであった。 平成25年度の研究は、ほぼ研究計画通りに行われたが、1つの論文がまだ執筆途中である。ただし、設計問題に関連して、研究計画では予定していなかったテーマ(倫理学理論の使用の問題)について考察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、次のように研究を進めていく。 ①現在執筆中の論文をできるだけ早急に仕上げる。 ②環境倫理学のテーマの一つである「ノートンの収束仮説の問題」を取り上げる。ノートンの収束仮説に従えば、環境について考えている人たちは様々な価値観を抱いているが、彼らは、生態系の働きについての科学的理解と、人間の利益と自然の利益が一致するという洞察を共有しているので、環境に関する目標や政策は一致(収束)するはずである。もしこのノートンの収束仮説が正しいとするなら、自然環境に関する政策の合意はスムーズに達成されるように思われる。ノートンの収束仮説に対する批判を吟味しながら、ノートンの収束仮説の問題点と意義について明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、研究機関を異動した最初の年度である。年度の前半は異動のための対応に時間を必要としたため、その分研究時間が減少しまった。そのため、年度の前半で使用する予定の分が残ってしまった。 平成26年度は研究費を次のように使用していく予定である。 ①設備備品費:約15万円(工学倫理、環境倫理学の文献費)。②国内旅行費:約78万円(できるだけ多くの学会等に参加して、議論を深める)。③謝金:約5万円(執筆した論文の査読をお願いし、論文の推敲を図る)。④その他:約30万円(コピー費や、研究成果の印刷費などに使用する)。
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