平成24年度の研究実績は次の通りである。(1)従来の応用倫理学の方法論を検討し、その問題点を明らかにした。(2)工学の設計問題の解決法の本質的な特徴を明らかにした。(3)社会問題を解決していくうえで、専門家と一般人(非専門家)の間の「双方向的コミュニケーション」が必要であることを明らかにした。(4)以上の研究成果を二つの論文にまとめた。また、関西倫理学会のシンポジウムにおいて提題者として発表することができた。 平成25年度の研究実績は次の通りである。(1)工学の設計問題を解決する方法論が、倫理問題を解決する際の方法論としても役に立つという点を明確にした。その方法論を「設計的思考」と名付け、その特徴を4つの項目にまとめた(すなわち、「制約条件の複雑性とトレード・オフ」、「制約条件の1つとしての倫理的価値」、「複数解の容認」、「行為者の方法論」)。(2)自然の価値の問題、一元論と多元論の対立の問題について考察した。この二つの問題を解決するためには、メタ倫理学における価値論争を検討する必要性が明らかとなり、メタ倫理学の価値論争の研究を並行して行っていった。その成果として論文の作成に着手したが、その完成は次年度に持ち越された。 平成26年度の研究実績は次の通りである。(1)これまでの研究成果を基に、応用哲学会において発表を行い、研究成果の修正・改良を行った。(2)これまでの研究成果を基に、応用倫理学の学術誌に掲載の論文を作成し、他の研究者と科学技術者倫理の教科書を作成した。(3)自然の価値の問題に関する論文を完成させ、哲学会の学術誌に投稿し、査読結果を基に論文の修正を行ったが、再投稿は平成27年度に持ち越された。(4)これまでの研究成果を1冊の報告書にまとめ、出版した。
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