• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

瑜伽行派における、空・無我の思想と利他行・衆生救済の関係に関する考察

研究課題

研究課題/領域番号 24520050
研究種目

基盤研究(C)

研究機関筑波大学

研究代表者

高橋 晃一  筑波大学, 人文社会系, 助教 (70345239)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2017-03-31
キーワード仏教 / 瑜伽行派 / 救済 / 無我 / 菩薩地
研究概要

本研究は『菩薩地』のテキスト分析を通じて,初期瑜伽行派において,「無我説」が他者救済の実践を裏付ける思想であったことを解明することを目的としている.仏教の「諸法無我」は突き詰めれば,日常の世界において「人」として認識されるような存在は本質的には実在しないということになる.しかし,一方で仏教は他人の救済を目指すものでもある.「人」の存在を扱う場合,単に個的存在者としての人間を教理的に分析することだけでは不十分であり,また大乗仏教が標榜する利他行も,他者の存在や救済の場を全面的に否定しては成り立ちえない思想である.こうした視点に立ち,H24年度は研究計画に従い『菩薩地』「力種姓品」のテキスト分析を進めながら,さらに「菩提分品」に説かれる「四念処」という実践的観想法に関する記述を手掛かりに,最初期の瑜伽行派が,大乗仏教の修行者としての菩薩の実在と,彼らによる衆生救済の実践の可能性をどのように裏付けていたのかを考察した.
「四念処」は初期の阿含経典にすでに見られる瞑想法であり,大乗仏教でも取り入れられ,瑜伽行派では『声聞地』で詳述される.『菩薩地』の「四念処」は,この『声聞地』の内容を踏襲したものであることを,『菩薩地』自身が述べている.一般的に「四念処」は身体の観察に始まり,次第に心の内面を観想し,ついには法の実観に至るというものである.阿含経やそれを分析するアビダルマ仏教では,この瞑想法は人間存在の不浄・無常を観るものであった.『声聞地』はこの姿勢を受け継ぎながら,それとはまったく別に,身体と精神を人間の活動に関わるものとして捉える視点を提示している.
行為の主体として人間存在を捉えることは,利他行の実践を標榜する菩薩というありかたを理解する上で非常に重要なものと考えられる.H24年度は「力種姓品」から文献学的裏付けをとるには至らなかったが,今後の研究を進める上で貴重な証左を得た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

H24年度は,思想研究としてはかなり納得のいく成果を上げたものの,基礎作業にはやや遅れが生じている.当初は「力種姓品」のサンスクリットテキストおよびチベット語訳テキストの校訂および翻訳を完了する予定でいたが,チベット語訳の校訂は不十分であり,また翻訳についてはさらに推敲と注解の補訂が必要である.現時点では完成度がやや低く,予定通りに進行しているとは言い難い.これは研究計画を提出したのちに,H24年度の一年任期で筑波大学での採用が決まり,研究環境が大きく変化したため,当初の計画通りに作業を遂行できなかったことによる.

今後の研究の推進方策

H25年度は研究計画二年目にあたる.再度,東京大学の特任研究員に採用されたため,当初計画していた研究環境に戻ることになる.H24年度に残した作業を進めながら,本来の計画に従って「自利利他品」の校訂翻訳作業の完了を目指す.なお,昨年度作業を進めていた「力種姓品」を題材に研究発表を予定している.

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Observation of the Body in the Bodhisattvabhumi: Significance of the kayanupasyana in the Early Yogacara Philosophy2013

    • 著者名/発表者名
      高橋晃一
    • 雑誌名

      印度学仏教学研究

      巻: 61-3 ページ: 1197-1203

    • 査読あり
  • [学会発表] 『菩薩地』における身体観2012

    • 著者名/発表者名
      高橋晃一
    • 学会等名
      印度学仏教学会第六三回学術大会
    • 発表場所
      鶴見大学
    • 年月日
      20120630-20120701

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi