研究課題/領域番号 |
24520078
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桐原 健真 東北大学, 文学研究科, 助教 (70396414)
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研究分担者 |
小川原 正道 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (40352637)
岩田 真美 龍谷大学, 文学部, 講師 (90610642)
上野 大輔 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (90632117)
KLAUTAU Orion 龍谷大学, アジア仏教文化研究センター, 博士研究員 (10634967)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 護法思想 / キリスト教 / 国学 / 神道 / 仏教 / 儒学 / 大乗非仏説 / 排耶論 |
研究概要 |
本研究の目的は、護法思想を通して、幕末維新期における仏教の歴史像を問い直し、近世仏教および近代仏教という両分野の成果を架橋するような総合的な語りを提示することである。この目的の達成のため2013年1月には、佛教史學会との共催により、ミニシンポジウム「近世仏教とその彼方:他者としてのキリスト教と思想の再編成」を開催し、本研究課題の成果報告をおこなった。その趣旨説明は以下のような内容である。 21世紀において、近世および近代仏教の研究は、大きく展開したことがひとつの学問的常識となりつつある。一方では高埜利彦や澤博勝などを中心とする「近世の宗教と社会」研究会、他方は林淳や大谷栄一が率いる近代日本仏教史研究会の活動によって、それぞれの領域をめぐる従来の学説やイメージは塗り替えられようとしている。しかしそれは時代区分という枠組みにおいて語られることに留まっており、これらの時代の成果を総合的・連続的に捉えるような研究はいまだ少ない。国際日本文化研究センターにおける末木文美士の研究班「仏教からみた前近代と近代」は両時代の間の連続と断絶への新たな視点を提示しようと試みたが、残された課題がまだ多く、更なる研究が期待される。ただし、日本仏教の近代的再編成を考える上で、「切支丹」・「耶蘇教徒」・「基督者」という「他者the Other」の問題はまず看過できないことが確かである。本シンポジウムでは、日本列島における近世から近代への仏教者のキリスト教観を検討し、以上の再編成の問題に新たな視点を提示しようとする。 このほかにも、宗教学会等へのパネルセッションなど活発な研究活動を展開し、当該期の護法論研究の重要性を訴えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると考えられるのは、以下の点に基づくものである。 1 幕末維新期を取り扱っている他の研究者をも招待したミニシンポならびにパネルセッションなどによる研究活動を通して、参加者の間の議論を深め、また幕末維新期の護法思想をめぐる全体的な描写に迫ることができ、さらに、本課題である幕末維新期における護法思想の問題の重要性が広く共有されるようになってきたと考えられるから。 2 本研究組織は代表者に加えて分担者4名により構成されており、研究分担の内容はは、①「内憂外患としての国学・キリスト教と護法論」(桐原健真担当)・②「幕末期の戦争と護法論」(上野大輔担当)・③「真宗の護法思想・再考」(岩田真美担当)・④「明治初年の〈通仏教的〉護法論の成立」(オリオン・クラウタウ担当)・⑤「明治初年の護法思想と新政府の対応」(小川原正道担当)という五つのテーマを軸に展開しており、おのおのその成果を挙げているから。 3 また、各研究組織構成員は各々の課題を担当すると同時に、資料調査や翻刻作業・研究会等によって、相互に課題を討議していくことで、仏教を中心とする当該時期の宗教空間を総体的に描き出すことができていると考えられるから。 4 次年度において研究分担者の改組により、さらに幅広い視野を持った研究活動が可能になると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の海外渡航ならびに離日にともない、あらたに二人の研究分担者を迎え入れ、研究組織を刷新して今年度の研究活動を行っていきたい。とくに近世仏教の教学的理解をふまえた研究活動の必要性が痛感されるため、この分野を専門としつつ、かつタコツボ的ではない幅広い視野を持った研究者を分担者として委嘱し、快諾を得ていることは今後の研究にさらなる弾みを付けるものとなろう。とくにこの研究分担分野においては、宗教思想史の観点から、近世後期から維新期における国学や新宗教の勃興と仏教衰退について研究を進める。近世から近代にかけての仏教衰退と神道勃興を全体として捉えることにより、幕末維新期の宗教的な変動を大きな視野で位置づけることが目指されている。 また、歴史学的側面から、近世のテキストを「史料」として解釈する必要性があるため、同様にこの分野での深い知見と業績を持つ研究者に分担者となることを快諾して戴いている。この研究分担分野においては、幕末の護法思想を、たんに開国過程においてのみ理解するのではなく、基盤としての近世において段階的に形成されたものを問うていく。この点で着目されるのが、近世学僧の講録であり、これらは幕末から近代に至ってからも、写本や刊本によって受容されていったものであって、こうした近世学僧の講録をはじめとする関係書物の調査と分析を通して、かかる課題を検討していくことが期待されている。 こうした近世における仏教を中心とした宗教空間分析の再構成が、今年度以降さらにクリアな形で明らかにされていくであろう。このほかゲストスピーカーを交えた合同研究会や学会におけるパネル発表など成果の中間報告の場を設け、また前年度および今年度のの成果報告として、各自が所属する学会等で論文・学会発表を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き護法論関係書籍の収集のために400,000円を計上し、また前年度までの研究成果を積極的に公開し、シンポジウムやパネルセッションなどに研究組織外の研究者を招致するために、旅費として800,000円を計上している。このほか、資料整理のための人件費として50,000円を、さらに通信費ならびに資料の複写費等のために140,000円を計上している。
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