研究課題/領域番号 |
24520416
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上原 聡 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (20292352)
|
研究分担者 |
NARROG Heiko 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40301923)
小野 尚之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (50214185)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 / アジア諸言語 / 主観性 / 主体性 / 語用論 / 認知言語学 / 言語類型論 / 事象構造 |
研究概要 |
研究計画の初年度に当たる平成24年度には、まず事象構造、動詞意味論の主体・主観性に関わる研究のうち、これまで研究代表者が中心的に研究してきた移動構文・内的状態構文など(Uehara 2006など)に関する研究成果を、他の構文の研究の雛形になるような形で集約し、語彙化の研究としての状態変化構文(Talmy 1985 ‘lexicali zation patterns’、Matsumoto 1996 ‘subjective-change expressions’)など他の関連構文に関しても資料および研究成果をまとめ、主観性・主体性に関する近似の概念を包括的に捉え整理した。 各構文に関する記述的なデータの収集作業もより多言語にわたるよう進め(これまで対象とされてきた言語においてはより詳しく広範囲にデータを求め、これまで対象とされてこなかった言語にも同様の現象を求め)、そのデータにもとづいた汎言語的に適用可能な主体・主観性の定義や分類の設定・検証を始めた。 記述・用例の収集には、文献資料としてアジア諸言語を中心に多言語の記述文法書(reference grammar)、個別言語あるいは複数言語の各構文、更に事象構造の言語類型に関する文献を利用した。海外共同研究者らともデータ収集や分析対象言語におけるより深い考察や分析の機会を持つことができた。 文献・資料・データの収集作業と平行して、研究分担者(小野尚之(語彙概念構造)、ナロック・ハイコ(主観化))との間で連絡を取り合い、プロトタイプ的な定義を検討した。各言語間の様々な事象を表す構文の類似点・差異を指摘し、類型化の検討を行い、また、個別言語の多様性がいかなる要因(の組み合わせ)で説明できるかの考察も始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が国際交流基金の派遣客員教授としてタイ国に約1ヶ月半にわたり出張するなど、やや他の業務においても多忙な年度ではあったが、例えばそのタイ滞在の機会を利用して、同国における本科研課題の海外共同研究者となっているThepkanjana博士やLaohaburanakit博士との情報交換やデータの分析や検討を集中して進めることができたなど、本研究課題の研究が大幅に遅れるには至らず、全体的におおむね順調に進展していると言える。 言語における主観性・主体性に関連する、言語学で対象とされる近似の現象や概念の整理に関しては、以前主催した言語の主観性に関するシンポジウムの成果として論文集を現在編集していることもあり、多くの研究者の様々な考え方に接する機会を得て、困難な課題である、主観性・主体性言語現象に関する整理・類型化のための筋道を得られつつあると言える。また、言語における主観性・主観性およびそれに近似の概念に基づく構文現象などのアジア諸言語におけるデータ・資料の収集に関しては、多言語にわたるデータ収集・分析という意味での横の広がりには多く進んだとは言えないが、数言語(タイ語など)の現象に関するより詳細なデータの収集とより深い分析において進んだと言うことができる。 以上のことから、翌年度の研究計画執行上の課題とその解決の方向性、およびより広範囲・多言語にわたるデータの収集と整理のための方向性が明確になったと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、本研究課題の基本的かつ最重要課題ともいえる汎言語的に適用可能な主体・主観性の定義や類型化の設定については、これまで断片的に収集した理論的枠組や言語現象の分析を包括的に再吟味し、後に若干の修正の余地は残すとしながらも、本研究課題の暫定的な結論としてのものを、様々な現象・類型間の関わりを含めた意味地図のような形で提示できるようにする。これには、これまで取り上げられてきた主観性・主体性言語現象の整理・類型化の見直しが必要であり、より高い汎用性・応用性を基準に研究代表者を中心に研究分担者・共同研究者間でも検討を繰り返すことになる。 主観性・主体性に関わる言語現象のデータについては、更に精力的に収集を進めるが、これまで収集したデータおよびさらに言語の幅と言語現象の幅を広げて収集して行くデータについては、定義や類型化の進展に応じて整理のし方も検討し、上記の意味地図のような全体の類型化と相関関係を表す現象分類とそれぞれの対応・代表する言語現象とのつながりが、研究者の頭の中にだけあるとならないように、データベースのような資料集の構築を検討する。 これらの作業の間、定期的に(少なくとも月に一度のペースで、特に海外共同研究者には電子メールで(必要な場合、また研究が計画どおり進んでいない場合は打ち合せに海外へ赴いても)連絡を密にしながら)研究会議をオーガナイズし、研究分担者の進行状況を把握するとともに、研究分担者・連携研究者・研究協力者間の情報交換を円滑にし、各自が研究全体を常に眺め渡せるようにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初初年度に計画していながら十分にできなかった資料収集及びその整理・分析、また関連学会での発表を次年度に延期することによって生じたものであり、次年度にそれらに精力的に取り組むことを考えており、そのための必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。 具体的には、前者には、図書購入費、資料提供・閲覧の費用、およびデータ処理分析、整理などの補助つまり研究補助の費用等が含まれる。データ収集が十分にできなかったため初年度には購入を見合わせた、収集したデータを処理分析 する専用のデータ処理用パソコンの購入と、関連した消耗品の保存メディア(CD-R/DVD-Rディスク)などが消耗品類として購入を予定している。 資料収集には、国内外の学術機関への出張旅費も考えており、また研究打合せ・共同分析のためにも国内外の連携研究者・研究協力者のもとへの出張旅費、あるいはそれら他の研究者の招聘旅費に研究費の使用を計画している。 これまでの研究成果の学会発表も考えており、2年目に当たる当該年度の6月末にカナダ・エドモントンで開催予定の第11回国際認知言語学会での発表もすでに決まっているなど、そのための海外渡航費に研究費の使用を計画している。
|