研究課題/領域番号 |
24520416
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上原 聡 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (20292352)
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研究分担者 |
NARROG Heiko 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40301923)
小野 尚之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (50214185)
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キーワード | 国際研究者交流 / アジア諸言語 / 主観性 / 主体性 / 語用論 / 認知言語学 / 言語類型論 / 事象構造 |
研究概要 |
研究計画の2年度目に当たる平成25年度には、初年度に引き続き、事象構造、動詞意味論の主体・主観性に関わる研究のうち、移動構文・内的状態構文など(Uehara 2006など)に関する研究に加え、語彙化の研究としての状態変化構文(Talmy 1985 ‘lexicalization patterns’、Matsumoto 1996 ‘subjective-change expressions’)など他の関連構文に関しても資料および研究成果をまとめ、主観性・主体性に関する近似の概念を包括的に捉え整理する作業を進めた 。このうち特にLangacker (1985)に始まる認知言語学におけるsubjectivity/subjectificationの理論の類型論的意義に関しては、現在編集中の以前主催した言語の主観性に関するシンポジウムの発表論文集において出版予定である。 各構文に関する記述的な文献・資料・データの収集・整理と分析の作業もより詳細なより多言語にわたるよう進め、そのデータにもとづいた汎言語的に適用可能な主体・主観性の定義や分類の検証を行った。海外共同研究者らともデータ収集や分析対象言語におけるより深い考察や分析の機会を持つことができた。また主観化・主体化にも関わりの深い文法化現象・言語表現の多義多機能性についても先行研究の整理と個別言語のデータの分析を海外共同研究者とともに始めた。これらの研究成果は国内外の学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外共同研究者と共同作業を含め、資料収集・コーパスデータの分析、及び研究成果の学会等での発表それぞれにおいて平成25年度内にある程度進めることができ、全体的におおむね順調に進展していると言える。 具体的には、研究代表者及び研究分担者が個人で資料の収集や分析を行った他に、研究代表者が海外共同研究者(タイ国のThepkanjana博士やLaohaburanakit博士)のもとに赴き、また海外共同研究者(ニュージーランド国のSanders博士)を研究代表者の研究機関に招聘して、情報交換やデータの分析や検討を集中して行うことができ、研究成果を部分的にまとめての論文の執筆も進めることができた。また研究成果発表では、6月にカナダ・アルバート大学エドモントン校での第12回国際認知言語学会で2論文、11月には台湾・国立政治大学でのPACLIC学会で1論文の発表を行った。3月には、主観性に関する論文集の共同編集者であり、主観性に関する論考も多い金沢大学の中村芳久教授のもとへ赴き、両研究室学生の共同発表会を行うとともに、論文集出版に向けての最終的な編集作業の打合せを行い校正の予定も含めたロードマップを決めるまで話し合うことができた。 以上の活動を通して、研究の3年目にあたる翌年度の研究計画、また計画執行上の課題とその解決の方向性、およびより広範囲・多言語にわたるデータの収集と整理のための方向性かも明確になったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
言語における主観性・主体性に関連する、言語学で対象とされる近似の現象や概念の整理に関しては、以前主催した言語の主観性に関するシンポジウムの成果として現在編集している論文集を年度前半内に出版する。当論文では、認知言語学の中でも特にLangacker (1985、他)のsubjectivity/subjectificationの理論についてその言語類型論的位置づけおよび意義を明らかにすることが主題であったため、残された課題を含めた今後の研究推進の方向性としては、次のようなことが考えられる。 1.言語における主体性・主観性の区別およびそれぞれの定義が暫定的にも示されるようになったため、それに基づく言語現象と言語表現の類型化を進める。可能であれば様々な現象・類型間の関わりを含めた意味地図のような形で提示できるようにする。これには、これまで取り上げられてきた主観性・主体性言語現象の整理・類型化の更なる見直しが必要であり、より高い汎用性・応用性を基準に研究代表者を中心に研究分担者・共同研究者間でも検討を繰り返すことになる。 2.主観性・主体性に関わる言語現象のデータについて、更に精力的に収集・分析を進める。これまで収集したデータおよびさらに言語の幅と言語現象の幅を広げより詳細に収集しながら、定義や類型化を検討していく。上記の意味地図のような全体の類型化と相関関係を表す現象分類とそれぞれの対応・代表する言語現象とのつながりが、研究者の頭の中にだけあるとならないように、データベースのような資料集の構築を始める。
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