本研究は、第二言語習得(文法規則、意味論的使用条件の学習)における身体化認知経験による学習、つまりジェスチャー、認知図式、動画、実物などの提示によって学習者の文法、意味理解が身体的に経験され、メンタルスキーマの形成につながる学習の方式の有効性を確認することが目的である。本年度は昨年度に引き続き、ジェスチャーの提示により初めて聞く英文の聴解理解における効果、またジェスチャーを自分で実施することによる対象英文課題の保持効果と再生効果について実験を行った。概ねジェスチャーのL2学習の補助効果についてはポジティブエビデンスを得られた。研究課題とその研究成果としては(i)偶発的自発的ジェスチャーではなく一定の規則に基づく統語的ジェスチャーを工夫し、それによりL2の統語構造の理解を助け、全体の意味把握を補助する効果が見込めるか。またジェスチャーを実際に実行することで構造を記憶することができるかを研究課題とした。これについては関係文法(Relational Grammar)を文の統語構造の分析、ジェスチャーへの投射に利用することで新たな方式を検討し、有効性を確認した。(ii)意味論的ジェスチャーの形容詞の意味理解における補助効果の検証も研究課題であるが、これについても有効性を確認することができた。この知見をもとに付属幼稚園で実技の公開とモデル授業を行った。またアメリカ応用言語学会(AAAL)トロント大会(2015年3月)で研究発表を行い多くの好意的意見、あるいは実験方法へのアドバイスを受けた。
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